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(注)本データはJAの共販であって、4割を占める個人出荷は含まれていない。
レンコン産地は、後継者が多い。レンコンは儲かるからだ。近年は価格も上昇傾向にあり、1ケース(4kg)2000円とすると、10a当たり450ケースで売上90万円になる。コメの粗収入の8倍だ。3ha経営すれば、3000万円近くになる。当地は離農があっても、水田として借りる人はいない。ハス田にしていいなら借りる。借地料は、基盤整備された地域のハス田は10a当たり5万円もする。条件の悪いところでも、2万~3万円もする。これに対し、コメ作りの水田は無料で借りられる地域も多い。
もう一つの要因は、レンコンは収穫の作業適期が広く(8月~翌年3月)、自由に休暇が取れる。1週間休んで海外旅行に行くこともできる。ハス田で出荷調整できるのだ(倉庫不要)。つまり、高付加価値、高収入、しかも自由時間が取りやすい。そういう意味で、若者に向いた農業である。そのため、レンコン農家は後継者が多い。
表3に示すように、レンコン産地の旧上大津村、下大津村は基幹的農業就業者の年齢構成が若い。15~49歳の割合(「新規就農者調査」と同じ年齢区分を使った)は、茨城県平均が6~7%に対し、レンコン産地の両村は2倍の11~12%もいる。つまり、若い人が就農している。平均年齢で見ても、茨城県の67歳に対し、両村は63~64歳である。これは新規就農者が多いことを反映したものであろう。
実際、茨城県市町村別新規就農者統計によると、土浦市の新規就農者数(39歳以下)は平成18~27年度で68名いる。販売農家数(15年農林業センサス)に対する新規就農者比率は5.7%で、県平均の3.3%の2倍近くも高い。
収益率の格差が大きいため、水田をハス田に転換する動きも多い。土浦市の調査によると、他の作物からレンコンへ転作された面積は、この7年間(10~16年)で38.9haに上る。16年のレンコン作付面積は479haであるから、その8%は最近7年間に水田等からハス田へ転換されたものである。
【(7)系統外の農家も多い】
レンコンは成長産業になる。ただし、規模拡大には限界が出よう。規模拡大は離農農家からの借地と、水田のハス田への転換という二つの要因があるが、後継者が多いため、離農要因が弱くなるからである。特に土浦周辺は都市に近く(霞ケ浦南部に比べ)、若者の後継者が多いから、規模拡大は限界に近づいている。
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叶芳和 カノウヨシカズ
評論家
1943年、鹿児島県奄美大島生まれ。一橋大学大学院経済学研究科 博士課程修了。元・財団法人国民経済研究協会理事長。拓殖大学 国際開発学部教授、帝京平成大学現代ライフ学部教授を経て2012年から現職。主な著書は『農業・先進国型産業論』(日本経済新聞社1982年)、『赤い資本主義・中国』(東洋経済新報社1993年)、『走るアジア送れる日本』(日本評論社2003年)など。
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