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2.低地土はフザリウム病害が出やすい
5月号で、小玉スイカのホモプシス根腐病を事例に、未耕地の黒ボク土は作物を育てる「地力」は低いが、土の体力に当たる「土力」があるため土壌病害に罹りにくい。しかし、土づくりを重ねて「地力」を高めると「土力」が低下して、病原菌が繁殖しやすくなることを解説した。
それでは、土の種類が違うと「土力」がどのように違うだろう。そこで、5種類の土を使ってフザリウムの培養試験を行なった。その結果、写真1のように土を混ぜていない寒天と培地だけの試験区ではシャーレのほぼ全面に菌糸が厚く拡がった。一方、寒天と培地に土を混ぜた試験区では、明らかに菌糸の生育が抑制されている。しかも、土の種類によりその程度の違いが明瞭だ。最も抑制されている土が黒ボク表層土と下層土で、逆に褐色低地土と灰色低地土では、菌糸が盛り上がっていることがわかる。
また、同じ土壌にフザリウム病害のひとつであるレタス根腐病の病原菌を添加してレタスの育苗試験を行なった。その結果、写真2のように、黒ボク表層土では発病が軽微であったが、灰色低地土と褐色低地土では激しく発病した。黒ボク下層土と赤黄色土では中程度の発病であった。
ここで、それぞれの土の「土力の素」である活性アルミナ(可溶性アルミニウム)量を比べてみよう。黒ボク表層土と下層土は1000/100g程度に対して両低地土ではその1/10以下に過ぎなかった。なお、黒ボク表層土は下層土より活性アルミナ量が少ないにもかかわらず発病が抑止された原因は、活性アルミナの形態が違うためと考えられる。すなわち、「土力」は活性アルミナの量だけでなく形態も関わっているようだ。いずれにしても、低地土のような活性アルミナが少なくリン酸が効きやすい土ほど「土力」が低くフザリウム病害に罹りやすいことは間違いない。
「土力」が低い低地土にリン酸を過剰施用すれば、ただでさえ少ない活性アルミナがリン酸で固定され、さらに「土力」が低下する。すなわち、5月号のホモプシス根腐病と同様にリン酸過剰がフザリウム病害の発病を助長することが明らかになっている。
3.土壌酸性化もフザリウム病害を助長する
窒 素肥料を過剰施用すると、露地畑ではアンモニア態窒素から変化した硝酸態窒素(硝酸イオン)が降雨により下層に流亡するが、その際石灰や苦土などの塩基が硝酸イオンのお相手(対イオン)として駆け落ちするため、交換性塩基が減少して土が酸性化する。一方、降雨のないハウスでは、作土に残留した硝酸態窒素の影響で土が酸性化する。また、最近のハウス土壌では硫酸イオンの蓄積もその一因となっている。
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後藤逸男 ゴトウイツオ
東京農業大学 名誉教授
全国土の会 会長
1950年生まれ。東京農業大学大学院修士課程を修了後、同大学の助手を経て95年より教授に就任し、2015年3月まで教鞭を執る。土壌学および肥料学を専門分野とし、農業生産現場に密着した実践的土壌学を目指す。89年に農家のための土と肥料の研究会「全国土の会」を立ち上げ、野菜・花き生産地の土壌診断と施肥改善対策の普及に尽力し続けている。現在は東京農業大学名誉教授、 全国土の会会長。
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