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浜松市のセルリーハウスでも、そのような窒素肥料の過剰施用による土壌酸性化が起こっていた。そこで、土壌酸性化がフザリウム病害の発生に及ぼす影響を調べてみた。栃木県鹿沼市の山林から採取した酸性の強い黒ボク表層土に苦土石灰(苦土カル)を混和して、pH5.5~7.0の土壌を作り、レタス根腐病菌を人工的に添加した。それらの土壌を用いてレタスの育苗試験を行なった。その結果、写真3のように、pH6.5以上では全く発病しなかったが、pH6.0以下では激しく発病した。
4.悪循環を断ち切る「努力」で萎黄病を克服した
セルリー萎黄病で全滅した浜松市内のセルリーハウスで、ひとりの農家が実験台となり、われわれの提案を全面的に受け入れた。まずは土壌診断分析の結果に基づいて、転炉スラグによる酸性改良、堆肥と有機配合肥料の施用を中止して窒素とカリを単肥で施用し、それらの施用量も削減した。さらには、増加したフザリウム菌密度を減らすため夏の休耕期間を利用した太陽熱消毒を行なった。
その結果、萎黄病の発生が顕著に抑制され、おまけに肥料代が大幅に削減できた。2年目以降は、堆肥施用中止により中断した有機物補給とセルリーの連作を回避するため緑肥を導入して、それを鋤き込んだ後に太陽熱消毒を行なうことにより、消毒効果が助長された。
このように土壌病害の蔓延には、連作とまちがった土づくりとの悪循環が大きな要因となっている。その悪循環を断ち切り、土が本来備えている「土力」を減らさない「努力」をしてこそ、土壌病害を克服することができる。
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後藤逸男 ゴトウイツオ
東京農業大学 名誉教授
全国土の会 会長
1950年生まれ。東京農業大学大学院修士課程を修了後、同大学の助手を経て95年より教授に就任し、2015年3月まで教鞭を執る。土壌学および肥料学を専門分野とし、農業生産現場に密着した実践的土壌学を目指す。89年に農家のための土と肥料の研究会「全国土の会」を立ち上げ、野菜・花き生産地の土壌診断と施肥改善対策の普及に尽力し続けている。現在は東京農業大学名誉教授、 全国土の会会長。
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