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表1の評価対象はわが家の場合、現在の経営者である私と、経営を私に移譲した父、新たに今年から雇用した従業員の3人が該当する。家族だけでも、従業員が1人で明らかに能力を把握しやすい場合でも、こうした表を作成して能力評価をしてみるとよい。
表1の集計結果を見ると、私と父の腕前はほぼ同等であることがわかる。その理由は「×:できない」という評価が一つもないからだ。また、「〇:できる」「△:ややできる」については、それぞれの経験や得意分野があり、違いが見られる。それに対して従業員はできない項目が6つあり、私や父と比べるとまだ能力に差があることが明らかである。
では、この結果を踏まえて、経営者はどのように考えて行動に移したらよいのだろうか。次の3つのポイントで考えることにしよう。
まず1つ目は、○△×の3段階評価がきちんと給与・報酬に反映しているかである。家族経営でやってきた農業経営ではよくあることだが、従業員の作業能力は経営者を中心に考えると明らかに足りないという評価になる。その一方で、雇用したからには責任が生じるのも事実である。給与・報酬はあらゆる要素の積み上げによって決定される。固定資産を扱う技能もその一部で、雇用する際に相手にもその旨を明確にしておかなければならない。
2つ目は、従業員の「×:できない」と評価された項目について、その理由を精査しておくことだ。作業経験が乏しくてできないのか、教え方がまずいのか、そもそも教えていないのかを整理しておくべきである。経営の大小や任せている仕事の内容によって状況は異なるものの、わが家では、固定資産に該当する道具や機械、車両等の扱いは、私と父、従業員の3人は同じレベルに高めておきたいので、外部の研修に出さずに済む課題ならば、十分な技能レベルを習得するまで諦めないで教えることが重要だと考えている。
最後の3つ目は、現在の経営者である私と前任者の父との技能の差について述べておきたい。これは、冒頭のよもやま話の後継者側のポイントの2つ目と重なる点だ。感情的な色眼鏡で判断しがちなので、冷静な評価を行なうことが前提となる。その上で自己評価をいかにして埋めるのか。ここには大なり小なり葛藤が生じることだろうと思う。曖昧でいては、前任者である父の小言は尽きないので、言われる前に自助努力でなんとかしていくべきである。
従業員やスタッフの多い経営では、部署や部門が明確に分かれて分担しているので、固定資産の項目別に整理する方法は適当でないかもしれないし、人数が増えれば相対評価で判断する場面も出てくるだろう。しかし、大事なのは評価項目を明確にして、3段階なり5段階なりの絶対評価をすることにある。
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齊藤義崇 サイトウヨシタカ
1973年北海道生まれ。栗山町在住。昨年、普及指導員を退職し、実家の農業を2014年から営む。経営は和牛繁殖、施設園芸が主体。普及指導員時代は、主に水稲と農業経営を担当し、農業経営の支援に尽力した。主に農業法人の設立、経営試算ソフト「Hokkaido_Naviシステム」の開発、乾田直播の推進、水田輪作体系の確立などに携わる。
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