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「調査によると、18年産で生産数量の目安を設ける予定なのは40道県の協議会。その多くは市町村レベルの割当数量も示す方針だった。残り4府県は『検討中』か、設定を市町村に委ねるとした。一方、市町村ごとの目安量をさらに細分化して、農家に周知する仕組みを想定するのは16協議会。1協議会は地域の判断に委ねるとし、対応は分かれている」
JA全中の調査結果では、3月時点で新潟県と同じスタンスだったのは、4府県のようだ。この調査は道府県別を明らかにしていないが、「府」という表現があるので、少なくとも京都府も市町村段階での生産数量の目安を設けない方針だったようだ。注目すべきは、40道県が、市町村ごとの「目安」を提示するということだ。農水省の強い指導があったことをうかがわせる。
全国米生産量トップの新潟県が市町村ごとの「目安」を提示しないというのは、農水省にとってゆゆしき事態と映ったようだ。国が考えた30年産以降の生産調整のスキームが破綻することを恐れたのだ。それでなくても新潟は、昔から良質米産地として過剰作付けが発生することで有名。農水省は、過剰作付け、引いては米価暴落を心配したのであろう。
激論の軍配は米山知事に
米山知事と柄澤政策統括官は、「30年産問題」への対応で基本的なスタンスでもかみ合わなかったみたいだ。端的に言えば、「30年産問題」を産地間競争のきっかけにしたいという米山知事の考え方に対し、柄澤政策統括官は、そうした競争は過剰米の発生、米価暴落を招くことになると心配しているようだ。
両者の「激論」は、外部からうかがい知ることはできないが、新潟県が公表した資料から、ある程度の想像はつく。手がかりは、先に触れた「30年以降の米政策検討会議」で新潟県が示した当初案だ。ポイントは、「農業者に対する生産目安となる情報提示方法」の部分。2017年3月の第2回検討会議で県の当初案として次の3項目が示されていた。
(1)市町村達成を前提とした目安提示は望んでいない
(2)目安提示したとしても、地域の意向や集荷業者・農業者実状と乖離
(3)全体として需要を伸ばそうとしている中で、目安提示することで農業者需要拡大努力を抑制することになる
筆者なりの解説を示しておきたい。
(1)は、新潟県の「30年産問題」への対応の当初の基本的スタンスである。「達成を前提」にしないというのは、市町村間の競争を誘発することを期待して、目標達成を義務づけるような方法は取らないという意味であろう。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
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