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土門「辛」聞

30年産問題 新潟県知事と農水「激論」の裏側


現物市場は、農水省が設立した全国米穀取引・価格形成センターのことである。2011年に解散したので、いまやオーソライズされた現物市場は存在しない。1兆円を超す米という商品が、小規模な仲間内相場しかないというのが現状だ。
一方の先物市場は、大阪堂島商品取引所が2011年に試験上場を開始したが、いまだに本上場までには至らない。JAグループの組織的ボイコットで参加者が少なく、取扱高が、市場存続のための採算ラインとされる1日3000枚の半分にも達しないというのである。
その不甲斐なさは、2年ごとの試験上場の更新を2回も繰り返す状態。生産調整の参考となる数値を示すような状況ではないのだ。原因は、農協組織のボイコットだけではない。飼料用米等の生産に対する助成金の存在もある。助成金の単価が相場へ大きな影響を与えるので安心して市場に参加できないのだ。
米山知事と柄澤政策統括官の「激論」から2日後、その大阪堂島商品取引所が、農水省に本上場への移行を認可申請するという方針が明らかになったと時事通信が伝えていた。もともと8月までに認可申請は出すことになっていたが、あまりにもタイミングのよい報道に、一瞬、農水省の泥縄的対応を疑ったが、そんなことはないと思う。
この認可申請に関連して、怒りたくなるような情報がある。現物と先物市場の整備に強く反対していた元JA全中専務理事の山田俊男参院議員の市場容認と受け取れる「転向宣言」だ。
「5月17日開催された全米工の総会後の懇親会で面白いやり取りがあった。懇親会にはこの日講演した元農水省事務次官の渡辺好明氏(全国農地保有合理化法人協会会長)が出席していた。そこへ山田俊男参院議員が訪れ、長めの挨拶をした。その中で自主流通米価格センター設立をめぐり、設立を推進した渡辺氏に対し、当時全中にいた山田氏は反対したという過去のいきさつに触れた。しかしその後時代が大きく変化し、『ちゃんとした現物取引市場が必要だ。』と発言。後ろにいた渡辺氏が拍手した。山田議員は4月28日に開催された農政ジャーナリストの会主催の全中金井常務の講演会にも出席、講演後『買取集荷になると価格ヘッジできる市場がないと農協が大損害を被る』と堂島関係者並みの発言をしている」(A&A; Research 2017年5月22日付け)
米山知事と柄澤政策統括官の「激論」の原因も、元をたぐれば農協組織が市場開設を妨害し続けたことだった。その旗振り役だった山田議員が、いまごろ「転向宣言」するというのは呆れてものが言えないが、いずれにせよ米というマーケットに夜明けが近いことをうかがわせる。

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