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Opinion

21世紀の農業のあり方


北海道でここ数年、TMRセンター方式が進められてきたのも同じ背景と見てよかろう。牛を生産の基盤である草地から切り離し、その代わりに輸入飼料を主とする配合飼料がベースでは変動経費の増加、また穀物の国際価格変動に常に脅かされる不安定な酪農経営をもたらす原因となる。
PKEの生産国であるインドネシアなどではそのために熱帯雨林の伐採が大々的に進んでおり、環境破壊問題としても注目されつつある。日本が輸入しているアメリカ中西部の穀倉地帯では土壌の極度の有機質の低下が問題となっているが、それは大規模な機械農業、工業的農業が原因である。同じ現象は1970年代に筆者がコンサルティング活動をしていたオーストラリア内陸部の小麦、ソルガム生産地帯でも起こっていた。土壌の有機質を2%台から4%に引き上げることが大きな課題であった。
ニュージーランドでは30年以前は200頭経営の酪農は大きい規模であった。150頭規模の酪農が多く、草を飼料の主体として、ライグラス、白クローバー、コックスフットのミックス草地で、窒素肥料は無、または少量のみ施されていた。施設、土地に対する負債は限られており、乳価格はキロ20円程度と低いにもかかわらず、経営は安定していた。酪農はライフスタイルと見なされていたのである。これは、太字で示した上述の内容と、農用地の土地価格の急激な上昇やフォンテラ社(ニュージーランドに本社がある世界最大の乳製品輸出企業)の国際企業化が起きる前のことである。ここ数年はキロ50円台に上がっているが、経営困難な酪農家が増えているのが現状である。
また近年、規模拡大、乳生産量増加に拍車をかける事態が起こった。それは高泌乳多頭化である。以前安定していた酪農家も、規模拡大を目指すことで借金が増加し、危機的状態に陥ったケースが少なくない。
新たな投資、牛の購入、施設や機械への投資、さらに土地購入と、固定経費の増加が大きな理由である。乳量増加、乳価格の上昇で粗収入は確かに増加するが、反面、投資に対する利子、返済の増加をもたらしているため、その支払いが粗収入の増加を上回ったのである。
SRが最大限にプッシュされたことは、餌不足の問題とPKEの輸入増加、尿素肥料の多用、そして増えた牛の管理のために従業員を雇用する必要から牛の管理に影響し、病気、繁殖の低下、獣医費の増加が大きなウエイトとなり、経営を難しくしている。そのため、少なくない数の大規模酪農が危機に瀕している。

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