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現在の技術体系には“やらなくてもよいことをする”作業(技術)がたいへん多いのである。放牧はそれを象徴している。牛ができることをなぜヒトがするのか? 4足動物は歩いて採食し、マニュアーを散布する。さらに、栄養的にも必要な物を選ぶことができる。ヒトは牛の作業を妨げず、その効率を上げるために柵を作る。不足のときに乾草を与える。土の管理をして補給する。
そのため、土-牧草-牛の栄養科学を基にして牛にとってベストになる技術体系、放牧システムを作ることである。フレキシブルな放牧とPMR(パートリー・ミックスド・レーション=生産乳量に応じて必要な濃厚飼料をロボットで個々に給餌する給餌)による栄養のバランスの管理はその例である。放牧を成功させるために草地の栄養を確かめ、乾草、サイレージで補う作業が重要となる。そこでは放牧地からの牛の栄養摂取を第一とし、購入飼料をあくまでも補助飼料と考えることが重要である。牛の第1胃を作るのは草であり、その原点を忘れてはならない。
草地におけるマメ科草の重要性、蛋白源、Caなどのミネラル栄養源、空中窒素の固定を決して忘れてはならない。自然の生態系を大切にし、それを基本にするとき、農業は成功するであろう。
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エリック川辺 エリックカワベ
農学博士、国際コンサルタント、SRU顧問
1940年、東京都生まれ。東京農工大学卒業後、ニュージーランドのマッセイ大学院で草地管理学を専攻し、放牧の原理を追究する論文を執筆する。74年、ニュージーランド国籍取得。その後、ニュージーランドとオーストラリアで大規模草地農業の試験や実践、コンサルティングを20数年間行ない、牧場管理システムに関する10余年の研究論文をまとめ、日本大学で博士の学位を取得する。81年、オーストラリアでEric Kawabe & Associates社を設立。同国を中心にニュージーランドや南米など世界各国で「土-作物・牧草-牛」の生態系を基本とする改善や永続農業を目指すコンサルティング活動を続け、91年からはSRU(Soil Research Union=2017年現在北海道全域の農業者が加入する土壌研究組合)を十勝の6人の若い農業者で発足、北海道をメインに日本でのコンサルティングと永続農業科学の教育指導活動を拡大する。著書に『草地の生態系に基づく放牧と酪農経営』(デーリィマン社)などがある。なお、84年ごろから始めたオーストラリアのコンサルタントを組織するEco-Agコンサルタント協会の会長を20年近く務めたことに加え、日本でのSRUの指導や発展が認められ、2015年に開かれたBrookside Consultants Conferenceの大会で“Hall of Fame”(名誉)賞を受賞した。Brooksideは肥料・薬剤会社から完全に独立した世界最大の土、植物、他の分析所を持つ協会で、それを支持するコンサルタントが世界中で活動し、その大会が毎年アメリカで催されている。今回の受賞は協会の200人を超えるアメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、アルゼンチンの独立系コンサルタントのなかから選ばれたもので、アジア、オセアニア地域では同氏が初の受賞者となった。現在ニュージーランド在住。
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