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イベントレポート

オランダ通信・拡大版/『農業経営者』セミナー


現代もその姿勢は強い。紀平氏が15年に参加したポテトビジネススクールでは育種、栽培、病害虫対策、施肥設計、関連機械、貯蔵技術、経営までの一貫教育がされている。スクールの拠点は、アグロ・フード・クラスターと呼ばれるジャガイモとタマネギの農業と食品加工の産業クラスターである。世界から集まった受講者たちはジャガイモ生産者や関連組織に所属しており、オランダで得た知識や経験を継承して世界に発信し、同時に彼らが世界から情報をそのクラスターに集める。そうやって世界のジャガイモ産業の舵取りをしていくための仕組みが進められている。たとえば他国で発生した疫病を察知すると、たとえトマトの疫病であっても、ジャガイモで発生する可能性を考え自国のために備えるだけではなく他国に売ることも視野に入れ、早々にジャガイモの抵抗性品種を育種する。また端境期に国内の食用としてジャガイモを輸入していても、じつはそれをつくるために使った種イモはオランダ産である。紀平氏も実際にスクールの受講生たちが、クラスターからオランダで育種、採種された種イモを自国に輸入することに決める場面を目にしたという。
農業を商業として捉える感覚は、紀平氏があるオランダ人に言われた言葉にも象徴されている。
「オランダ式農業は契約を結ぶための交渉が重要だ。だから住んでいる間、交渉力や語学力、人脈をつくりなさい」

国や所有にこだわらずマーケットと利益を重視

オランダ農業が強い二つめの理由は、オランダという国にこだわらないことだという。
オランダは全農産物の約70%を輸出している。輸出力の背景には、農薬基準の汎用性のある作物をつくって
いることに加え、相手国のマーケットに何が必要なのかを捉える感覚に優れていることがあるという。たとえばトマトであればニッチマーケット向けの高付加価値のものをつくるのか、マスマーケット向けに低コストで1品種をつくるのか、相手国のマーケットをリサーチしたうえで決めてつくっている。昨今成長している有機栽培も認証制度が国ごとに異なるため、どこに輸出するかという戦略に基づいて認証を取得している。
相手国のマーケットを理解できるオランダ人が育つ背景には、オランダのトュッセンヤール(TUSEENJAAR)という教育課程の間に1年間、何をしても良い期間がある。この制度を活用して、多くのオランダ人が他国へインターンシップに行く。たとえば先のクラスター内の学校とジャガイモの育種会社により、育種会社のインターンシップ生として他国に派遣されると、育種の知識も習得しながら、派遣先の国のマーケットも学ぶことができるというわけだ。

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