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仕組みを説明しよう。中学生以上はまず入園料として16枚つづりの1550円のチケットを購入する(注:3歳~小学生は11枚つづりで1150円)。園内を散策しながら目当ての果物の園地へ入り、収穫体験でもぎ取った1房(個)と指定されたチケット何枚かを引き換える。交換後はその場で食べてもお土産として持ち帰っても構わない。
品目ごとのチケット必要枚数は固定せず、残量に応じた変動相場制にしている。ブドウが豊富なときは1房6枚だが、不足していれば10枚ということもある。その分、リンゴが1個3枚だったものを2枚にしたりと園側でコントロールする。
チケットのシェアも認めており、3人のグループで2枚ずつ出し合えばブドウ1房を3人で分けられる。食べ放題であれば1人に5~6房は計算しなければならないが、ちょうど狩りでは1房未満で事足りるのだ。
「お客様は、チケットを買った時点で貨幣価値から切り離され、16枚をどう使い切るのかに頭がシフトします。ですので、ブドウやリンゴが高いのか安いのかがよくわからなくなってしまうんです。1550円で16枚つづりということは1枚95円くらいですよね。スーパーへ行けば1個100円とかなのに、ここではチケット3枚で285円になります。果物そのものではなく、収穫体験に対して価値を支払っている感覚でしょう。でも、お客様は満足しているようです。いろんな果物が採れますし、それを使って加工品づくりもできますからね」
ちょうど狩りの開催期間中は単品の食べ放題コースも用意されている。だが、来園者が選ぶのは圧倒的にちょうど狩りだという。
これは食育の面でも副次的な効果をもたらした。家族連れに見られるあの光景だ。
「元が取れないでしょ! もっと食べなさい!」
甘い果物だからといってそんなに食べられるものではない。無理して気分を悪くしては元も子もない。きちんと味わうことがあるべき姿だろう。その意味で多品種というのも重要なキーワードになる。品種によって食味は別物だからだ。
こうしたちょうど狩りが展開できたのはさまざまな果樹が存在していたからに他ならない。そのルーツをたどってみたい。
試験場出身の父が
通年の観光農園化に導く
平田は三代目に当たる。
初代は祖父の昌明で、戦争から引き揚げてくると、西日本でリンゴが栽培されていないなら自分たちで作ろうと、近隣の10戸と共に2haの園地で始めた。ところが、リンゴは実らず、10年が経ってようやく着果したときには昌明一人だけになっていた。その際、彼が選んだ道はいまに通じる観光農園だった。
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平田真一 ヒラタシンイチ
(有)平田観光農園
代表取締役社長
1965年、長野県塩尻市生まれ。広島大学法学部卒業後、会計事務所に勤務。96年、家業の(有)平田観光農園に移り、2007年、現職に就く。(株)果実企画取締役、(株)イチコト取締役、川西地区果実共同加工組合代表、農のふれあい交流経営者協会(元・全国観光農業経営者会議)会長も兼任する。
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