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そのなかで着実に育ったのが、克明と同じ鳥取大学農学部卒で、島根県農業試験場(現・島根県農業技術センター)出身の加藤瑞博(40)だ。彼は国産のドライフルーツ市場に着目し、2009年に(株)果実企画という会社を興して社長になった。平田観光農園本体では常務取締役に就いている。
ドライフルーツ事業に関して触れると、砂糖やオイル、保存料といった添加物を一切使用していない国産商品がまだなかった04年、自社農園産のブドウで試作し、後に長野県中野市へ工場を構えた。原料は信州をはじめ、全国各地の果物を自分たちの目で吟味し、ブドウやプルーン、プラム、柿、リンゴ、イチゴ、ミカン、イチジクが商品化されている。ファーストエントリーだったこともあり、百貨店や高級ホテルに納品できているという。
「当社は給与体系も結構差をつけているんです。加藤は私より多いんですよ。社員からすれば彼が一つの目標になっています。会社が指示したわけでもないのに日が昇ったら出社している人もいっぱいいますよ。独立志向も多いですしね」
月に一度の会議では社員から事業企画を募っている。採用基準は「お日様照らして果実を作る。」に該当しているのかどうかだ。
「お日様の『お』はオリジナル、『ひ』は必要とされるか、『さ』は採算性、『ま』は顧客満足度です。これに合致
していなければOKしません。『か』、『じ』、『つ』は考える、実行する、作り上げるです。会長である親父は社員にいつもこう語りかけています。『そのまんまじゃなくて常にチャレンジしながら変わっていこう。常に未完成であれ』。絶えず進化しながら時代のニーズを捉えた観光農園にしていきたいということです」
求人はほぼ東京にかけており、それこそ全国各地から多数の応募があるそうだ。社員となった彼ら彼女たちは農家の出ではないため、生産者にありがちな作ったものをどう売るのかではなく、先に売り方を想定してから作る発想ができるのだという。
平田ら役員が採択したプランには予算が付けられる。立案者は生産から販売まで一貫して対応し、利益が得られれば給与にも反映される。経営者感覚が身につき、モチベーションも高まるというわけだ。
高知県出身の社員からの事案で新規の体験施設も今春オープンした。(株)イチコトは里山暮らしで当たり前のようになされてきたことをプログラム化したもので、染め物体験やそば打ち体験など7種類のメニューがある。自然の豊かさや日本の伝統文化のすばらしさを実感してもらうことが狙いだ。屋内を利用するため、天候を気にしないでも済むようになっている。
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平田真一 ヒラタシンイチ
(有)平田観光農園
代表取締役社長
1965年、長野県塩尻市生まれ。広島大学法学部卒業後、会計事務所に勤務。96年、家業の(有)平田観光農園に移り、2007年、現職に就く。(株)果実企画取締役、(株)イチコト取締役、川西地区果実共同加工組合代表、農のふれあい交流経営者協会(元・全国観光農業経営者会議)会長も兼任する。
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