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新・農業経営者ルポ

0勝0敗より10勝10敗、世襲禁止も追い風の挑戦し続ける観光農園



地域連携も柱に

食べ放題の観光農園であれば、入園料を引き上げるか規模を拡大しない限り売り上げは伸びない。その点、平田観光農園は、有限の果物をなるべく減らさないようにしながら来園者の満足度を高め、利益率を増大させるちょうど狩りなどの体験メニューを充実させてきた。11年に登場した「イチゴディスカバリー」もその一つで、通常の30分食べ放題コースとは別のその企画はイチゴの摘み取りとそれを使ったスイーツづくりができる、一度で二度おいしいコースだ。収穫は1パック分と、食べ放題に比べれば量的にはるかに少ない。
観光農園の枠にとどまらない取り組みは何も社内だけではない。地域との連携も探ってきた。
「92年に川西地区果実共同加工組合という組織を発足させ、規格外の有効利用で加工品づくりに着手します。6次産業化なんて言葉がなかった時代ですけど、翌93年に園内に設けた果実加工研究所でジャムやアイスクリーム、惣菜味噌などを開発・製造しては売店や道の駅で販売してきました。レストランで使う食材にしても地元のものをメインで調達するようにし、消費拡大に努めています。地域への集客ということでは、温泉宿やワイナリー、美術館と共同でPRに出向いたりもしています」
戦後間もない昭和30年に産声を上げた平田観光農園は誕生から60余年が経過した。当初に来園した子どもは孫と訪れる年齢になった。その間の変遷はここで紹介してきたが、それはほんの一部に過ぎない。1年中、何かの果物狩りができ、近年では里山を活用した体験メニューも取りそろえながら、来園者が何度もリピートし
たくなる工夫を凝らしている。遊び方は人それぞれを具現化してきた。
歴史ある観光農園は世襲の道を閉ざすが、それはきっとプラスに働くだろう。
「0勝0敗より10勝10敗」
何もしないより何かすることを評価する。今後も「お日様照らして果実を作る。」というルールの下でどんな事業が生まれるのか、目が離せそうにない。 (文中敬称略)

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