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スマート・テロワール通信

地域産業の基礎は農業だ


愛知県は日本で最も元気に見える地域だが、30年先のビジョンは?

スマート・テロワール協会会長の松尾雅彦は講演で、5月に愛知県知多半島を訪問した。知多半島・渥美半島・三河湾地区の人口は297万人。市町村別に見ると、いずれも10年間で103%と増加している。さすがに世界一を誇るトヨタ自動車の周縁都市である。自動車産業の下請工場の操業度に支えられ、住宅地の開発が活発だったと推測できる。
しかし、よく考えてみよう。現在はハイブリッド車で成功しているが、30年先のビジョンに焦点を当てれば、電気自動車のシェア上昇を考慮しないわけにはいかないはずだ。電気自動車は部品点数が1/5になると言われている。そのとき下請工場はどうなるか。現在も部品価格は毎年1%の割合で削減されている。大企業の下請工場が衰退するのは歴然としており、悲哀が感じられる。
この状況は、現在の大阪市周縁地域の困難な状況と重なる。軽工業と電器産業で栄えた大阪府下の人々は、産業がアジア諸国に流出して将来のビジョンに「カジノ」の招致を期待するようになった。愛知県豊田市の周縁市町村は、大阪の周縁地域の体験を学習する必要がありそうだ。
愛知県全体の農業出荷額は3000億円。約12000haの休耕地がある。国産原料に依存したカルビーは、7000haの耕地からスナック菓子1500億円の販売額を生んでいる。この計算を用いれば、休耕地で2500億円の食料出荷額が創出できる。
三河湾周辺には特徴のある食品産業がある。この食産業を伸ばしていくことが鍵である。農水産業と連携しながら地産地消を活発にし、孫子に遺す地域社会を目指してオンリーワンの地域をつくってほしい。

視点
松尾 雅彦
スマート・テロワール協会会長
元カルビー社長

【工業品輸出重視は日本の大阪化を招く】

「日欧EPA交渉が大筋で合意」と報道され、全世界の30%で関税のかからない地域が出現すると、喜色満面でテレビのアナウンサーが報じていました。
そのアナウンサーは、ついで影響を受ける業界に対してはそれなりの措置を講じるといっています。顧みれば、オレンジの自由化以来「適当な措置を講じる」というメッセージが絶えることはありません。この措置が「保護主義」で、日本の農村は保護主義の呪縛に呪われているのではありませんか?
我が国は、資源のない工業製品の輸出で栄えようという国是「加工貿易立国論」を立てて、農産物の輸入を促進してきましたが、日本人口の1/2が居住する農村部の衰退は甚しく、人口が流入する都市部でも「課題先進国」と豪語しています。

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