ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

特集

地理的表示保護制度という選択


7月11日、農林水産省は日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)の大枠合意に基づき、関税撤廃のほか、GI制度についても相互で保護する品目を決定した。相互保護の対象として発表された品目は、38の登録産品のうち、生産量が少ないため輸出に当面向かない品目を除く8品目に新たな品目が加えられた。相互保護の対象になると、相手国内産品と同様の審査手続きを行いEPA発効後に保護されることになる。
EU側のリストには、チーズ、ハム、オリーブオイル、バルサミコ酢など農産物では71品目が含まれる。相互保護が始まると、日本産の「パルメザンチーズ」は、イタリアのGI産品の「偽物」となるため名称が使えなくなる。同様に、日本の産品の名称もEUで保護されることになる。知的財産を活用して日本の良いモノを海外にアピールする時がやってきた。

あおもりカシス/青森県 品種を守り
市民参加型の栽培を確立した
あおもりカシスの可能性

1 産地の概要

(GI)地理的表示保護制度登録第1号、『あおもりカシス』は本制度において多くの恩恵を受けた産品である事は間違いない。青森市を中心とした、東青地区を中心に現在、約200名の生産者が栽培をしている。実際に出荷・販売まで手掛けている生産者はその内の140名程度で、大規模農家はいない。栽培面積は全体で8ha、出荷量は年間12t程度である。原料は選別後冷凍にして、販売は『あおもりカシスの会』が一括して実施している(あおもりカシスの会は、生産者が中心で作る任意団体で事務局は青森市役所内にある)。

2 特性と課題

あおもりカシスの苗は、昭和40年代にドイツより導入され、株分けを中心に品種を守って来た経緯がある。そのため原種に近く、現在の一般的な品種に比べると粒が小さい。
このため機械化が難しく、収量の割に手が掛かり、高単価となる。また表面の皮も厚く、適度な甘みはあるが、酸味が強く、苦味もある。その反面、通常の品種より重量当たりのアントシアニンの量は多く健康面での訴求効果は高い。
しかし、カシス自体はそのまま食べられる果樹ではなく、一部の消費者を除いて、殆どは加工業者や飲食店等に原料として供給され、消費者の口に入る時には、加工されているため、GIマークを目にする事は殆どない。加工業者や流通業者等の関係者の知名度は確実に上がっているが、消費者の認知をどう上げるかが今後の課題である。
また、登録後引き合いが増えているが、増産は機械化が難しく、既存生産者の栽培面積を増やすと同時に、新規生産者を増やす事で対応はしているが、増産には時間が必要となる。

関連記事

powered by weblio