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特集

地理的表示保護制度という選択



3 GI登録後の変化

あおもりカシスは、GI登録前は知名度が低く、手間が掛かるため、一般的なカシスより、高単価で販売せざるを得ず、苦戦が続いた。カシスの木も成長が進み、1本当たりの収量も増え在庫が多くなっていた。GIの制度は法人格を持たない、任意団体でも登録が可能という事で、渡りに船であった。この制度で一番課題となる合意形成は、あおもりカシスの会が中心で、会員の中に青森市役所が入っていた事もあり、順調に進んだ。登録1号という事もあり、注目を集め、瞬間的ではあるが、インターネットへのアクセス数が登録前の10倍に増えた日もあった。現在では落ち着いて来てはいるが、登録前の2倍近いままのアクセス数を維持している。また、全国放送のテレビ番組に取り上げられるなど、知名度も飛躍的に伸び、問い合わせも多いが、単価が高いため、実際の取引に繋がる事は多くはない。取組や、品質特性等を理解した上で取引が始まる場合が多く、地元を中心に取引が増加している。
そして、生産者側にも大きな変化があった。趣味の延長線上でやっていた生産者が多かったが、GIの特徴である、品質を明文化する事により、品質に対しての意識が高まり、ブランド化への誇りを持ち始めている。新規参入も6戸あり、確実にあおもりカシスの裾野は広がっている。

4 あおもりカシスの未来

あおもりカシスは、他の登録産品と考え方が違う部分が大きい、収益性も大切な要素ではあるが、地域の活性化を考えた社会性の高い生産物でもある。GIの理念の1つ、『地域の共有財産』を大切にしている。また、お客様の手元に届く場合、生産物というよりは、加工品で届く場合が多く、地元を中心とした、加工業者等の協力も不可欠となる。
品質を向上させるため、県と連携して栽培マニュアルを整備して来た経緯もあり、『あおもりカシスマイスター』制度を作り、生産者が生産者を教える環境を整備して来た。生産者・加工業者・行政、そして地域が一体となって取り組む、あおもりカシスは、こらからの農業の1つの在り方を示している。
関わる人たちが、お互いの立場で当事者意識を持って産地を盛り上げる。古くて新しいあおもりカシスの未来に期待したい。

鈴木勝美

岩手志援株式会社 代表取締役。食・農を通した地域づくりコンサルタント。地域の自立を第一に考え、やり方ではなく、在り方を大切にしたコンサルティングを実施中。

すんき/長野県 伝統食「すんき」の継承・発展のため、原点に戻り品質基準を設定

1 信州・木曽谷の名物「すんき」

「木曽路はすべて山の中である」―島崎藤村が代表作「夜明け前」の冒頭にこう書いたように、深い山々に囲まれた長野県木曽地域。ここで、「すんき」と呼ばれる伝統食が営々と食べ継がれている。世界的にも珍しい「無塩漬物」。平成29年5月にGI登録された。

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