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特集

地理的表示保護制度という選択



4 新シーズンに向け活気づく地元

「すんき」のシーズンは、晩秋から厳冬期。GI登録されたのは本年5月。登録の発表と同時に、注文が殺到したが、製品は、どの生産団体にも無く、電話口で「10月末まで待って」と詫びる毎日だったそうだ。
いよいよ登録後初のシーズンが近づき、「キックオフイベント」の計画が進むなど、地元は活気づいている。
「GI登録で木曽の伝統の味が認められとてもうれしい。より良質でおい
しい『すんき』を提供できるように生産工程管理に力を入れたい。乳酸菌発酵のメカニズムの科学的究明を深め、伝統食の今日的発展につなげて行きたい」。すんきブランド協議会の松井淳一会長は、こう話している。

毛賀澤明宏

(株)産直新聞社代表取締役。雑誌「産直コペル」、季刊「産直新聞」の発行人。全国の直売所・地産地消の地域おこしの現場をつなぎ、情報と経験の共有を広げる中から、中山間地農業集落の継続可能なあり方を探る。「全国縦断!直売所経営セミナー」や「信州直売所学校」主宰。農水省選定「地産地消の仕事人」等歴任。著書に「どーんと直売!喜びを売る農産物直売所」(川辺書林)など。

くろさき茶豆/新潟県 枝豆ブランド産地で農協が主体となり丁寧に合意形成

1 産地の概要

「くろさき茶豆」は平成29年4月GIの第29号に登載された、新潟県初、枝豆初の産品だ。
産地は新潟市中心部から約10kmの南部に位置し、信濃川が育んだ肥沃な土壌を活かして生産が行われている。生産者は200名を超え、7月13日現在17の組織で協議会を設立している。流通は農協経由が約1/3、その他多様な販売先を持っている。

2 特性と課題

「くろさき茶豆」は、ほうじ茶を煎じたようと例えられる“独特の香り”と食べ飽きない“食感の良さ”が特徴だ。種子は明治末期に山形県から個人が導入して以来、集落から門外不出として長年継承され、コメの生産調整(減反)政策が始まった昭和45年以降、旧黒埼町の転作作物として位置づけられ地域で栽培が広がった。他方、栽培面では草丈が伸びて倒伏しやすく、さらに「莢の色が褪めやすく品質が低下しやすい」という市場関係者等からの指摘もあった。
これらの課題に対処するため、産地では栽培指針を定め、元肥量、追肥時期、排水対策さらに土作りという管理を組織が一体となって取り組んできた。また、出荷規格を遵守し、鮮度保持のために2時から収穫を始め朝8時までに選別・検査を経てJAの予冷施設に入庫するというルールを設定した。この「朝取り」について、ある農家は「自分一人では無理だが、地区の農家全員がやっているから出来る」と語っている。
栽培が難しい品種を産地が結束して栽培面、出荷面での取組みを実践することにより、県内の5割を占めるブランド産品が確立されたのだ。

3 GI登録に向けた合意形成

GI法が平成26年6月に施行された3か月後の10月、産地では早くも申請に向けて第1回準備会を立ち上げた。8月末に地元新聞がGI制度を取り上げ、「くろさき茶豆」が有望ではないかと論じた記事に農協経営管理委員が反応し、チャンスを前向きに捉えた。

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