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特集

地理的表示保護制度という選択


水はけの良い土壌と冷涼で夏場の日照時間が長く、昼夜の温度差が大きいことから急激な成長が抑制されじっ
くりと時間をかけて大きくなることで成分含量が凝縮することでこの特徴は現れる。他産地との品質差別化の重要なポイントともなっている。
十勝川西長いもの種子(種いも)は、当初から独自に産地の栽培環境に適した優良株を選抜し、育種を繰り返してきたものである。6年間かけて種子を増殖させる際には、ウィルス等の罹患を防ぐため隔離圃場で厳格に管理され、生産計画にあわせて必要量だけ生産者に配布されており、遺伝資源を守る仕組みが構築されている。

2 産地化への経緯

1980年代に入ると、「十勝川西長いも」は当該地域の特産品として社会的にも広く認知されるようになり、いわゆる“ブランド”としてJAや生産者も意識するようになった。需要も大幅に増加したことで、帯広市川西地区だけでなく、同等の土壌や気象環境を有する隣接する芽室町、中札内村の生産者にも参加を呼びかけ、昭和60年には「十勝川西長いも運営協議会」を設立した。
その後も、増え続けるニーズに対応するため清水町、新得町、池田町高島、足寄町、浦幌町、鹿追町にも産地は拡大していった。JA帯広かわにしが中心となって既にブランドとして確立しているところに、新たな産地がJAとして協議会に参加したためGI申請時の合意形成も容易であった。

3 輸出に向けた取り組みと課題

平成11年には台湾への輸出を開始している。台湾では地場産のものより白く美味であることが評価された。その後、薬膳の食材としてアメリカやシンガポール等にも輸出するようになり、現在では輸出額が11億円を超えるまでに成長している。グローバル市場に対応しブランド力を強化するために、集出荷貯蔵施設では通年出荷とあわせHACCPやSQF認証の取得により品質管理を徹底している。
輸出量を拡大するなか、平成24年ごろには、台湾で「十勝川西長いも」を模倣する商品が流通しているものもみられ、ブランドの保護が必要となった。平成18年には北海道で最初に地域団体商標を取得し、その後海外でも商標登録を進めていたが、今回、より効果が期待される地理的表示(GI)保護制度が新たに設けられたので申請を行い、平成28年10月に夕張メロンにつづく北海道で2番目の登録産品となった。

4 GI制度への期待

平成28年産の十勝川西長いもからGIマークをつけた出荷を始めたが、昨年秋に十勝地方を襲った大雨被害の影響から不作となり、市場相場も高く推移しているため、現時点ではGI取得による国内での経済効果を定量的評価することは難しい。海外市場では、まだGI制度が周知されていないため、今後、取引先や小売店でもGIについて説明し理解を深めてもらうことで、模倣品から守り、販売促進に資するような取り組みに発展することを期待している。

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