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特集

地理的表示保護制度という選択


HACCPやSQF認証と同様に、GI取得によって十勝川西長いもの定義を明確化し、その生産工程管理も厳格に管理されたことで国内外の取引先等からの信用も高揚すると同時に、生産者のモチベーションも向上しており産地力が強化されていることを実感している。
今後、日本のGI登録が多くの国々において普及認知されることで、新たなグローバルマーケットへの進出が期待される注目の産品である。

鈴木 善人

技術士(農業部門)、株式会社リープス代表取締役、株式会社スマートサポート代表取締役、一般社団法人 The Earth Cafe 代表理事。

三輪素麺/奈良県 伝統食品が互いの製造工程を開示して品質基準を作成

1 産地の概要

手延べ素麺発祥の地で受け継がれてきた「三輪素麺」は、平成28年3月29日にGI登録第12号となった。
素麺は、寒い時期の製造に適し、農林業従事者の冬場の仕事確保につながったため、昭和40年代以降、家内工業として広く受け入れられ、生産地が奈良県下全域に広がった。
奈良県三輪素麺工業協同組合の組合員約80名と、奈良県三輪素麺販売協議会の構成員である卸売りや一部生産を担う9社が、共同でGI申請・登録を行った。

2 「三輪素麺」の特性とGI登録を目指した理由

「三輪素麺」は、タンパク質の高い小麦粉を使用して生産することによって、麺にしっかりとしたコシの強さが出て、伸縮性に優れ、非常に細い製麺が可能となる。茹でのびもしにくい。GI登録された生産方法によれば、原料を練り合わせ、麺帯にした後、撚りをかけ、細く延ばし、熟成させ、引き延ばし、分けてまた引き延ばし……といった手間をかけた伝統製法で作られている。このような加工特性や製造方法だけでなく、古くからの歴史的経緯を持つことも「三輪素麺」の特徴だ。その名前のとおり、三輪の大神(おおみわ)神社と深いつながりがあり、生産の始まりは約1300年前の奈良時代に遡る。毎年2月5日に、全国の手延べ素麺産地の関係者が集い、大神神社で相場を占う卜定祭(ぼくじょうさい)や、1年の活動の締めくくりとして夏のおわりに行うそうめん感謝祭は、現代においても続けられている。
このように伝統性という価値を持つ産品ではあるが、産地では、全国的な知名度はまだ十分ではないと考えられていた。そのため、ブランド力向上の一手段として、GI登録を目指したそうである。

3 GI登録に向けた合意形成

産地では「三輪素麺」の品質のさらなる向上のために、基準づくりを重視した。通常であれば、自社の製造工程を他社に明かすことは考えにくいが、奈良県三輪素麺販売協議会の構成員である9社が、互いの工場を見学し合って、設備やデータの公開をし、品質基準づくりと合意形成に努めたそうである。地域一体となって、ブランド価値の維持・向上を図る覚悟をしなければ、このような動きはできなかっただろう。

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