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地鶏は、在来種(明治以前に成立した38種鶏)由来の血液が50%以上のもので、飼育期間75日以上、28日齢以降平飼い、1平方mに10羽以下で飼育された鶏をいう(注、ブロイラーの飼育期間は50~55日程度、飼育密度は16羽前後)。比内鶏、名古屋コーチンなどが有名であるが、新しい品種が開発され、現在、全国に約50種類ある(注、このほか、地鶏の定義を満たさないが、若鶏の飼育期間を長くしたり、良質なエサを与え味が良くなるよう工夫し、地鶏と判別が難しい「銘柄鶏」というものがある〈高級ブロイラー〉)。県別に出荷羽数が一番多いのは徳島県(阿波尾鶏は年200万羽)、2位は兵庫県(丹波地どり等)、3位は愛知県(名古屋コーチン)である。
茨城県では、奥久慈しゃもが有名である(主産地は久慈郡大子町)。奥久慈しゃもは1988年(昭和63年3月)に大阪で開かれた味の品評会(全国鶏肉消費促進協議会主催による全国特殊鶏(地鶏)味の求評会)で第1位に評価され、一躍全国ブランドを確立した。名古屋コーチンなど全国の名だたる銘柄鶏肉を押さえての第1位であり、「山のとり肉 奥久慈しゃも」として有名になり、有名料理店で使われるようになった。出荷日齢は雄120日、雌150日(年間5万羽)、開放型鶏舎内で平飼いしている(注、以前は放し飼いであったが、2005年の鳥インフルエンザ流行以降鶏舎内)。
(注)アニマルウェルフェアanimalwelfare(動物福祉)の観点から、近年、欧米では「ゆっくり育つブロイラー種」の育種が始まっている。ただし、まだ小さな動きである。
【2 高級焼き鳥屋「銀座バードランド」に独占納入】
「奥久慈しゃも」は1980年代前半に作出された新種鶏であるが、育種の基本方針は、まず肉の味を最高のものとすること、次いで雛の生産効率(産卵率)が高いことを目標にして、父親としては食味に定評のある「軍鶏(しゃも)」を、母親としてはこれも食味の良い「名古屋種」と食味と産卵に優れている「ロードアイランドレッド」の交雑種を用いた3元交配(3種とも在来種)である(図2参照)。茨城県はもともと「軍鶏」の飼育が盛んであったことも、この組み合わせになった背景である。
この組み合わせによる肉の味は良かったが、当初は販路に苦しんだ。全く無名の地鶏(奥久慈しゃも)であるため、売り先が見つからず、生産者が飛び込みで地元の料理店等を営業して歩いた。しかし、なかなか販売は増えず、冷蔵庫は満杯になり、途方に暮れる日々が続いたようだ。料理店への営業では、知名度の低さから、しゃもを、ししゃもと勘違いされることもあったようだ。まさにこのような時期に、大阪で開かれた“味の品評会”で1位になり(上述)、販路拡大の一大転機になった。
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叶芳和 カノウヨシカズ
評論家
1943年、鹿児島県奄美大島生まれ。一橋大学大学院経済学研究科 博士課程修了。元・財団法人国民経済研究協会理事長。拓殖大学 国際開発学部教授、帝京平成大学現代ライフ学部教授を経て2012年から現職。主な著書は『農業・先進国型産業論』(日本経済新聞社1982年)、『赤い資本主義・中国』(東洋経済新報社1993年)、『走るアジア送れる日本』(日本評論社2003年)など。
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