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【土と施肥の基礎知識】
堆肥は格安肥料
- 東京農業大学 名誉教授 全国土の会 会長 後藤逸男
- 第20回 2017年08月02日
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「土づくり」には有機物補給が欠かせない。農地に施用する有機物は堆肥と新鮮有機物に大別される。
堆肥とは、本来稲わらや麦わら、野草などを野外で積んで腐熟させた資材である。あらかじめ微生物による有機物分解を受けているので、土に施用後は短期間で播種や定植ができる。一方、新鮮有機物には油かすや魚かすのような有機質肥料がある。土に施用すると土壌動物と微生物の働きで分解され、初期に大量の二酸化炭素が発生するので、施用直後に播種や定植を行なうと阻害を受けやすい(図1)。新鮮有機物の初期分解にたずさわる主な微生物は酸素を好む糸状菌(かび)であるため、畑では活発に分解されるが、水田では分解が抑制され作土が酸欠になりやすい。わらなどの新鮮有機物を鋤き込んですぐに湛水すると酸欠によりメタンガスが発生して、いわゆる「沸き」という現象が起こる。堆肥は、日本農業の原点ともいえる水田への施用に適した有機物である。
稲わらのような木質を原料として野外で製造した堆肥には窒素・リン酸・カリなどの肥料成分がほとんど含まれていないため、その施用目的は主に土壌物理性の改善であった。また、堆肥とは別に肥料が必要で、堆肥と肥料の併用施用が当たり前となった。しかし、コンバインの普及や人手不足で、従来の堆肥を作る農家は影を潜め、家畜ふんを原料とする家畜糞堆肥が主流となった。さらに平成11年以降は地下水汚染対策として、野外での家畜糞堆肥製造が規制され、最近の家畜ふん堆肥には多量の肥料成分が含まれるようになった。
稲わらのような木質を原料として野外で製造した堆肥には窒素・リン酸・カリなどの肥料成分がほとんど含まれていないため、その施用目的は主に土壌物理性の改善であった。また、堆肥とは別に肥料が必要で、堆肥と肥料の併用施用が当たり前となった。しかし、コンバインの普及や人手不足で、従来の堆肥を作る農家は影を潜め、家畜ふんを原料とする家畜糞堆肥が主流となった。さらに平成11年以降は地下水汚染対策として、野外での家畜糞堆肥製造が規制され、最近の家畜ふん堆肥には多量の肥料成分が含まれるようになった。
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後藤逸男 ゴトウイツオ
東京農業大学 名誉教授
全国土の会 会長
1950年生まれ。東京農業大学大学院修士課程を修了後、同大学の助手を経て95年より教授に就任し、2015年3月まで教鞭を執る。土壌学および肥料学を専門分野とし、農業生産現場に密着した実践的土壌学を目指す。89年に農家のための土と肥料の研究会「全国土の会」を立ち上げ、野菜・花き生産地の土壌診断と施肥改善対策の普及に尽力し続けている。現在は東京農業大学名誉教授、 全国土の会会長。
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