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イベントレポート

地域活性化という「遊び」/『農業経営者』セミナー

今回の講師は、本誌の連載「地域活性化という『遊び』」の筆者山本晋也氏である。山本氏は京都で現代美術作家として活動しながら、オーガニックレストランを経営していた。3人目の子供を授かったころ、京都府福知山市の農業生産法人みわ・ダッシュ村の清水三雄氏と出会い、社員として福知山市の限界集落に移住することとなる。移住後は、空き家をリフォームしたり畑で食材をつくったりしながら、自給自足の生活を目指してきた。
昆は、山本氏を講師に招いた趣旨を次のように述べた。
「昨今、田舎暮らしがブームになっているが、実際には難しいというのもよく聞く。移住者が地元の人々と意識の違いがあり、うまく人間関係をつくることができないからだ。かつて共同体を構成する人々は、生きる糧を得る『稼ぎ』とともに他者に報酬を求めない『つとめ(互酬)』の仕事があることを当たり前と感じていた。田舎で暮らすというのは、単に移り住んで自分の都合だけで生きることではない。山本さんのお話から、この『つとめ』を人々が取り戻すという社会的な意味を汲み取ってもらえると思う」
山本氏にとって、この「つとめ」は楽しい経験だった。山本氏は講演で、遊びを通じて子供たちと地域の高齢者たちの活力が引き出され、地域活性へと向かうさまを生き生きとした写真とともに聴衆に語った。以下、山本氏の話を紹介する。

理想の子育てのために
移住を選択

京都の市街地から8戸12人の稲葉集落に移住したのは8年前のことである。きっかけは子供が3人に増えたことだが、1人目の子供が生まれてからずっと、世の中を大きく捉えたうえで、どう行動するべきかを考えなければならないと思っていた。
結婚前は現代美術に没頭していた。美術大学を卒業後、より広い学びの場を求めてバックパッカーとして世界中を旅した。カリフォルニアでは食べものに感銘を受け、第三世界では自分たちで何でもつくってしまう人々の問題解決能力や、ものがなくても楽しむ力に驚きを感じた。
子供が生まれると、買ってきた食材で料理をすることに抵抗を感じるようになり、京都市内の畑で食材をつ
くるところから始めた。家族とも、ものごとを簡単に済ませるよりも過程に面白さを見いだす暮らしを送って
きた。たとえば3人目の子供が生まれるときには、産婆さんを呼んで自宅出産を経験したり、家族で北海道のキャンプ場を巡る生活をしたりと、経験すること自体を楽しんできた。
子供が3人になると、京都の街中で育てるには窮屈に感じるようになった。子供たちをのびのびと育てたいという思いと、農業への興味が高まったことから、田舎への移住を考えるようになった。
そんなとき稲葉集落が空き家への移住者を募集しているのを耳にした。行ってみると、その家は山深い集落のいちばん奥まったところにあり、周囲はまさに日本の原風景だった。子育てに理想の場所だと一目惚れし、一家で移住した。

村で培われた
子供たちの力

私は子育ての方針として、子供たちには既製品のおもちゃやお菓子は与えない。すると、子供は自分で考えてつくろうとするものだ。

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