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集落の人々は80歳を過ぎている。彼らの暮らしは非常に興味深かった。共同作業の間の会話や行動も、まるで映画を見ているようで楽しかった。50~70年前には靴やカッパを自分たちでつくったとか、家族で木を伐り出してきて家を建てたといった昔話も面白かった。
年一度の祭が来ると、集落のみんなで山から笹を取ってきてチマキをつくって神様に供える。昔の農業に欠かせない牛が病気にならないよう、牛の薬として供えるのだ。民族学の本に書いてあるような、この集落にしかない風習である。おじいちゃんやおばあちゃんにとってその作業は負担だろうが、子供たちが面白がって質問すると楽しそうに話してくれる。
子供たちは普段から、おじいちゃんやおばあちゃんの家に遊びに行っている。集落の人からは、村のなかに子供の声が聞こえるだけで、こんなに雰囲気が変わるものなのかという声があった。
寄り合いは、かつてはみんなで料理をして食べておしゃべりをする楽しみのひとつだった。しかし最近では高齢でたいへんなので配達してもらったお弁当を食べていた。地域のイベントは面倒だからと惰性でやるようになると先細りになってしまう。
そこで、私たち一家が料理をつくって集会所に持っていき、手品やトランプで遊ぶような寄り合いを開いてみた。すると、以前は夕方6時ごろには終わっていた寄り合いが、夜10時まで盛り上がるようになり、楽しい寄り合いが復活したのだった。
私が好きな芸術家に、ドイツのヨーゼフ・ボイスという人がいる。彼は社会彫刻という概念を出した。暮らす人の日々の選択や行動すべてが街や国の風景や雰囲気を彫刻のようにつくり上げているというものだ。つまり集落に住む人は全員が芸術家で、その芸術家たちがつくっている作品が集落。日本人も全員が芸術家で、日本人がつくった作品が今の日本という社会。それを意識すれば、一人ひとりの行動が変わってくるはずだと思う。(談) (文/平井ゆか)
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