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新・農業経営者ルポ

社会的弱者と組んだからこそできた新しい農業のかたち

静岡県浜松市の京丸園(株)代表取締役の鈴木厚志(52)は、現代の仕組みの中で組織や企業として社会の課題に挑戦するソーシャルファームの一つと位置づけられる「ユニバーサル農業」というものに取り組んでいる。施設での水耕栽培を中心に水稲や露地野菜と手広い複合経営では、80人いる従業員(パートタイマーを含む)のうち、4分の1以上に当たる23、4人が知的、身体、精神、発達といった障害を抱えた人たちになる。特例子会社や比較的重度障害を持つ就労移行B型にも作業を委託しており、それも合わせると毎日35人程度がミニチンゲンサイなどの定植や収穫、パック詰めを行なっている計算だ。鈴木はただ障害者を雇用したいわけではない。そのままでは働けない社会的弱者と労働力が欲しくて何かを変えたいというテーマを持った農園とのマッチングに新たな可能性を期待したのだった。 文・写真/紀平真理子
「ユニバーサル農業を始めてから農業が変わっていくなって感じがするんだよ。ユニバーサル農業と農福連携とは同じだと思うかもしれないけど、僕はただ障害者を雇用したいわけではなく、農業ってもんは転換していかなくてはいけない中で、障害者や福祉が農業を変革するキーワードになるだろうと考えたんだ」
経営を発展させたいとか、儲けたいというとき、多くの人は何も変えずに進めたがるものだが、鈴木は何かを変えてこそチャンスがあると信じていた。
「目の前にそのままでは働けない子が来たとき、この子がどうやったら農園で働けるか、この子と一緒にどうやったらビジネスができるかと考えて初めて僕らの頭は動く。そういった意味で農業と福祉とはいい組み合わせだと思っているんだよね。当社は障害者雇用で注目されるので、僕が優しい人だって世間に広まるわけだけど、全然優しくないよ(笑)」
鈴木が経営する京丸園は天竜川沿いにある。100aの水耕施設でミニサイズのミツバや葉ネギ、チンゲンサイ、70 aで水稲と50 aでサツマイモなどの野菜を生産している。

特別支援学校の教員に言われた
「だから農家の人は困るんです」

1996年から障害者を雇用してきた鈴木がユニバーサル農業を始めるきっかけになった話がある。トレーの洗浄作業を特別支援学校の先生を通じ、1人の障害者に依頼した。内容はトレーを1日1000枚洗ってもらうことだった。その障害者の元を離れ、しばらくして戻ってくると1枚目のトレーをまだ洗っていた。鈴木が学校にクレームを入れると、担当教員との間でこんなやりとりが交わされた。
「どんな指示を出されたんですか?」(担当教員)
「きれいに洗ってくれと指示しました」(鈴木)
「それを指示だと思っているんじゃないでしょうね? そんなことやっているから日本の農業は衰退するんですよ。だから農家の人は困るんです。ちょっと水を苗にあげてくださいとか、だいたいこれくらいとか言うでしょ。抽象的なんです。農家の人は作業指示ができていない。たとえば、『何時何分に、気温が何℃になってから、株元から何cm離れたところに何ccの水を与えなさい』。これが作業指示ですよ」(担当教員)

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