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【土門「辛」聞】
タマネギと二条大麦 佐賀県農業「失敗の本質」
- 土門剛
- 第156回 2017年09月01日
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タマネギべと病大発生
3年間で出荷量半減
佐賀特産のタマネギべと病被害は、16年産の出荷量が7万4500tと、病気大発生前の13年産に比べて半分となる過去最悪の大被害となった。これだけ被害を拡大させたのは、発生予察や防除などの相次ぐ失態だった。
ここ数年、ベと病は各地のタマネギ産地で大発生した。佐賀県のように防除に失敗した産地もあれば、病気を克服した産地もあった。表1は、出荷量の多い北海道、兵庫、佐賀の3トップ産地に長崎(5位)の出荷量の前年産比を示したものである。
佐賀は、3年間で半減した。「産地壊滅」と表現しても、あながち誇張ではない。佐賀にとって最大のライバル、兵庫も、この間、ベと病の発生に悩まされたが、出荷額は前年産比3.8%減にとどまった。その程度の出荷減にくい止めることができたのは、兵庫県の防除の取り組みが奏功したものだが、着目すべきは、佐賀にはない大きな要因だ。それは肥料や農薬などを扱う肥料商やタマネギ集荷商など商人系業者の存在。
兵庫では、ベと病が発生すると商人系業者と農協の双方が防除で知恵を出し合う。わが友人のSさん(南淡路市)は、日頃から「病気が発生しても俺の技術で農家が儲けてもらったら酒がうまいがな」が口癖の肥料商。商人系業者に負けじと農協も知恵を出す。両者は競争関係にあるのだ。
残念ながら、佐賀にはその競争がない。佐賀にも商人系業者はいる。ただ、農協の力が強すぎて萎縮してしまっている。その農協に行政も及び腰だ。農協組織が知事の選挙母体になっているからだ。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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