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農薬便覧で、先発のMZ水和剤ともども有効成分を調べてみた。MZ水和剤の有効成分量は10%だが、ベと病に無効な光学異性体を半分含むので実質5%。それを含まないゴールドMZは3.8%。しかも希釈倍数がMZ水和剤の500~700倍に対し、ゴールドMZ水和剤は1000倍。これらを勘案すると散布される有効成分量は前者の半分以下しかないことになる。
佐賀県の担当者は、ゴールドMZの発売以来、メーカーの説明を鵜呑みにしてきたと弁解するが、にわかに信じがたい話だ。県内の農協がゴールドMZを扱うようになった時点で、肝心の有効成分量のチェックも怠ったとしか思えない。これは農業試験研究センターや農業技術防除センターの大失態である。
佐賀県はベと病の発生予察でも問題がありすぎた。彼らの発生予察は、病気が発生してからの発生予察だ。例えば、13年産。現場の報告によるベと病の初発は1月頃だった。最初、県北部で報告されたが、県南部の主産地・白石地区で確認されるのが4月頃。3カ月ほどでほぼ全県に拡がったわけだが、農業技術防除センターの発生予察は2月後半だ。
しかも現場からリドミルゴールドMZの効果低下を疑う声もあったのに、そうした情報が佐賀県に届いていなかったとは思えない。それを示すのが13年2月22日付け「病害虫対策資料第12号」。同センターのレベルの低さを示す、まったく危機感のないメッセージだ。
「薬剤散布量が十分でないと効果が低下するので、薬剤には展着剤を加用して株全身が濡れるよう、むらなく散布しましょう。薬剤耐性菌の発生を防ぐため、異なる系統(グループ)の薬剤を上手にローテーションで使用しましょう」
「発生面積と被害面積推移」を見ていると、12年産でゴールドMZの効果を疑うシグナルは出ていた。被害面積が従来より急増していることだ。これをシグナルととらえきれなかった佐賀県の農業試験研究センターや農業技術防除センターは、一から出直しだ。
補助金目当てで
適地適作を無視
佐賀県知事にぜひ読んでいただきたい資料がある。この6月21日、栃木市が公表した「平成27年産 二条麦産出高(推計)で日本一」と題したプレス・リリース。「平成27年生産農業所得統計において推計した結果、二条大麦において、栃木市が日本一となりました」というアナウンスだ。
(1)栃木市 8億9000万円(栽培面積2200ha)/(2)佐賀市 8億2000万円(同4840ha)
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
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