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「僕が持つ責任とはこの土地をきちんと使うことでしょうし、息子にその資格がなければ継がせる必要はないと考えています。でも、引き継いでもらえるシステムがなければ誰もできませんので、分業化を含め体制づくりはしておかないといけません」
二代目の利明は病に倒れたことで会長に退いた。大塚はすでに何年も利明と仕事してきたが、それでも自分に経営の実権が委ねられてからは無理がたたり、精神的にも肉体的にも追い詰められたという。いまでこそビニールハウスを巡回するのは週に1回程度で収まっているが、体制の立て直しにはしばらく時を要した。
「まだ家族が土日も出てこないといけませんので改善の余地はあります。雇用するためにももう少し利益を稼ぎ、母体を強くしないといけませんね」
ここ十年で3倍増の自作地は
取引先への供給責任
販売額で見た場合、大塚農場では農協への出荷額は全体の2割に過ぎないという。冒頭の亜麻もそうだが、じつにいろんなことをやっている。大塚は、ウチはわらしべ長者みたいなものと前置きしたうえでこんなエピソードを披露してくれた。
「企業からすると、ウチは最後の頼みの綱みたいなものなのかもしれないですね。『ホームページを見ました』とかって飛び込みで来るんですけど、よくよく話を聞いてみると農協に断られて紹介されたとかそんなのばっかりです。営業という営業もそれほどしていません。でも、取引が始まったら継続と拡大に励みますよ」
事実、大塚農場には毎年何件かの大口契約があるという。今年はジャガイモで25 tの取引がスタートした。
単価は安くしているわけではない。市場価格にもあまり左右されず、言い値が基本になっている。コメでいえば1俵1万円を割り込む年でも2万円で販売する。
経営面積はここ十年で20 haから60 haに急激に増やした。これは借地ではなく、購入による。周囲からはカネもないのにと冷やかされたそうだが、過去の実績から資金調達はすんなり行った。交付金を抜いた販売額は10年前に比べ倍になっている。同時に、代替わりしてからはずっと黒字決算を続けてもいる。全面積のうち、借地が2haと少ないのは農地は資本と捉え、土地改良などを踏まえて総合的に決断したからだ。取引先への供給責任でもある。
今後も大塚農場は既存や新規を問わず、企業から重宝されるに違いない。その際、あり余る要求を満たしていくにはやはり人材がカギになってくる。 (文中敬称略)
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大塚慎太郎 オオツカシンタロウ
(有)大塚農場
代表取締役
1981年、北海道当別町生まれ。04年、酪農学園大学酪農学部卒業後、幌加内町役場農業技術センターに就職。05年、前年に起こった台風災害の影響に伴い、実家の(有)大塚農場に就農。13年、代表取締役に就任。作付品目:コメ、小麦、ジャガイモ、カボチャ、大豆、小豆、黒豆、くらかけ豆、トマト、キュウリ、ナス、ニンジン、亜麻。販売加工品:トマトジュース、ニンジンジュース、亜麻関連商品、味噌、小麦粉、ポップコーン。
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