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特集

産業用ヘンプの世界の最新動向

本誌2012年9月号で「今から始める大麻栽培」という特集を組んだところ、大反響を呼んだ。あれから5年が経過したが、日本での栽培面積は約6haと横ばいで推移している。ところが世界を見渡せば、産業用ヘンプは医療用・嗜好用と区別され、先進国を中心に生産・利用の両面で急速な発展を遂げている。そこで、産業用ヘンプにスポットを当て、世界の最新動向をお伝えしたい。 構成・まとめ/加藤祐子

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世界の産業用ヘンプ栽培

現代日本では、「大麻」には嗜好品のイメージが植え付けられて危険なものと捉えられがちだが、麻は和名を大麻草または大麻といい、かつては日本人に馴染み深い植物だった。この特集では誤解を避けるために「麻」と表記する。
麻は3カ月で約3mに生長するアサ科の一年草である。中央アジア原産の農作物で、人類の有史以来繊維は衣服や縄や紐に、茎は建材や燃料に、種子は食料やオイルに使われてきた。冷帯、温帯、熱帯と幅広い気候帯に適応し、栽培地は世界各地に分布している。英名ではHemp(ヘンプ)といい、農業の世界では、歴史的に工芸作物(Industrial Crop)という位置づけにある。
繊維原料としての需要に加えて、昨今注目されているのは、麻に含まれる化学成分、カンナビノイドだ。マリファナ成分であるTHC(テトラヒドロカンナビノール)とCBD(カンナビジオール)など約100種類が発見されている。THC濃度の低い品種に限って使用する産業用ヘンプは、健康に役立つCBD商品としてヘルス業界でも注目の的である。

【栽培地は世界各地に分布】

世界各国の産業用ヘンプの栽培実態を調べてみたところ、FAO(世界食糧機関)統計では繊維用と種子用に分けて栽培面積を集計している。最新の2014年の国別のデータによれば、世界の栽培面積は合わせて約7万ha。地図上に繊維用と種子用の合計面積で国別に色分けしてみたが、非公式データも多く、情報量は不十分で、実態を捉えていない。
今年6月に開催されたヨーロッパ産業用ヘンプ協会(EIHA)の国際会議で報告された最新動向を見れば、その理由も理解できよう。93年から16年までのEU各国の栽培面積の変化(図1)を見ると、13年以降に急速に拡大しているのだ。それだけ、産業用ヘンプの業界が新しいというわけである。
EU圏で第二次世界大戦後に麻の栽培を禁止しなかったのはフランスだけで、そのほかの国々は米国の麻薬規制に従った。しかし、麻やカンナビノイドに関する研究成果が蓄積されたことで、産業用ヘンプは医療用大麻やマリファナと切り離して考えられるようになる。96年にドイツで産業用ヘンプのTHC濃度に関する国際基準が設けられ、麻薬規制をリードしてきた米国でも14年に産業用ヘンプ農業法が制定され、国際的な障壁は低くなった。いまや産業用ヘンプ
は生産・利用の両面で拡大の一途をたどっている。

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