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特集

産業用ヘンプの世界の最新動向



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産業用ヘンプの
大規模栽培体系

【繊維型と薬用型の2つの品種】

麻は使用目的によって産業用、医療用、嗜好用に分けられる(表1)。産業用で利用するのは、マリファナ成分であるTHC(テトラヒドロカンナビノール)が花序の重量比で0.3%未満と少なく、CBD(カンナビジオール)を多く含む繊維型の品種である。CBDには、THCの向精神作用を打ち消す働きがあり、たとえ繊維型の麻を煙にして吸引してもいわゆる「ハイ」にはならない。主に種子、茎、葉を利用する。
一方、医療用あるいは嗜好用に利用するのは薬用型の品種で、THCを花序の重量比で5~25%と多く含み、CBDが少ないものである。医療用では花序と葉、嗜好用には花序のみを利用する。
日本で「麻=扱ってはいけないもの」と認識されているのは、麻に繊維型と薬用型の2つの品種があること自体がほとんど知られていないためだ。2つの品種を区別して扱うことが、産業用ヘンプを理解する前提となる。

【栽培品種と規制】

EU圏内で産業用ヘンプとして栽培できるのは、THC濃度が0.2%未満の品種であることが規定されている。言い換えれば、THC濃度が0.2%未満の品種であれば、種子、茎(繊維と麻幹)だけでなく、葉や花序も、ビールやハーブ茶、エッセンシャルオイル(精油)、香料、医療用原料などに加工して商品化することはすべて合法である。
EUでは麻栽培に特別なライセンスを必要としないが、農家には地方自治体への届け出が義務付けられている。国ごとに対応は異なり、ドイツでは州政府に届け出ることになっている。農家はフランス政府が指定した麻専門の種子会社、あるいは麻の種子を保有するいくつかの農業試験場から種子を入手し、栽培する。
なお、日本での栽培には、大麻取締法により栽培者免許と研究者免許の取得が義務付けられている。いかなる品種でも、葉と花序の利用は違法とされるので、茎と種子以外の利用はできない。
代表的な栽培品種を表2に示した。ここには日本に導入されていない品種も含む。EUが作成する87品目の共通品種カタログにはA―63番に「Hemp-Cannabis sativa(麻)」の項目があり、繊維型の52品種が掲載されている(2015年12月末現在)。また、OECD(経済協力開発機構)の品種証明制度には69品種の登録があり、重複を除くと合わせて72品種となる。また、薬用型の品種は、米国で麻の医療情報を発信するLeafly社のウェブサイトに掲載されているもので2368品種ある。

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