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麻のさまざまな
産業用途
【工芸作物としての麻の価値】
工芸作物の分類で見ると、麻由来の原料は繊維、油糧、嗜好料、芳香油、香辛料、薬用と幅広く該当する(表3)。
まず、麻の茎から採った繊維は、衣服や縄の原料となる。江戸時代に商品化された七味唐辛子のなかで最も大きい粒は麻の実(おのみ、あさのみ)で、日本人にも香辛料として馴染み深い。種子の約30%は油分で、必須脂肪酸であるオメガ6とオメガ3を理想的な割合で豊富に含むことから油糧作物でもある。さらに、麻独特の薬効成分“カンナビノイド”は100種類以上発見されており、医療目的で使われるため薬用植物の顔も持つ。生い茂った麻畑の中や花序からは独特の甘い香りがする。それを抽出するとエッセンシャルオイル(精油)が採れるので、芳香油料作物にもなる。
一方で、麻は糖類が約8%と少なく、デンプン質もなく、ゴム質もないので、糖料、糊料やゴム作物ではない。染料に関しては、利用に関する文献は知られていないが、現代の技術では工業的な自然染め原料として利用可能だ。
このように、麻は花序を原料とするマリファナ、ハッシッシ、ガンジャなどの名称で知られる嗜好品以外にも、茎や葉、種子がさまざまな分野で原料として利用されている。国産の麻原料は少量に限られるので、原料の入手は難しい。食品や加工品を輸入に頼っているのが現状である。
【老舗の繊維機械メーカーが一次加工を請け負う】
麻の収穫物のうち、一次加工が必要な茎はレッティング後に圧縮梱包され、一次加工場へ運ばれる。この時点での麻茎は、靭皮部の繊維と木質部の麻幹(オガラ)が混合した状態である。これを繊維とオガラに分離する工程を一次加工と呼ぶ。一次加工で廃棄物が発生しない点も麻の特徴である。
麻繊維専門の一次加工のラインを開発する会社は、世界的に見てもそれほど多くなく、昔ながらの繊維機械メーカーが担っている。一次加工ラインは、約2億5000万~3億円をかけた全長35~45mの大規模なプラントで、500~1000haの栽培規模に対応できる(図2)。
一次加工段階での麻の単価は、1kg当たりのEU圏の現地価格を日本円に換算すると、靭皮繊維は50~150円、オガラは35円、麻くずと絞り粕は10円、麻実油は1000円となる。
【産業用ヘンプの市場規模は新たな分野で開発が進む】
一次加工を経た靭皮繊維とオガラは、その後、不織布、建築材、動物用敷料、製紙原料、プラスチック原料などの最終用途(完成品)に要求される品質を満たすためにさらに加工処理される。たとえば成長著しい米国の産業用ヘンプの市場規模は2016年で6億8800万ドル(約778億円)に及ぶ。興味深いのはボディケア商品が24%、食品が19%、CBD製品が19%、サプリメントが4%で健康に関わる用途で6割を超えていることである(図3)。
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