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特集

産業用ヘンプの世界の最新動向


品種の観点から見た単一条約の課題を表5に整理した。THCをこれまでどおり「猛毒で全く役に立たない(等級IV)」と位置付けるのか、「比較的安全な有用成分」と位置付け、等級IVから除外したり、等級IIや等級IIIに格下げしたりするのかが最大の課題である。
現状では、各国がTHC濃度を0.3%未満と定めて産業用ヘンプは普及しており、THC以外のカンナビノイドを使った商品が販売されている。また、薬用型でも大麻植物由来の医薬品が世界28カ国で販売され、さらに医療用大麻や嗜好用大麻を合法化した国や地域が出現してきたことで、ますます整合性がとれなくなっている。栽培禁止条項や臨床研究の手続きが複雑で大規模な研究が進められないという事態は、早急に解決したいところである。ちなみに同じ国連の管轄でも、植物の新品種に関する国際条約(UPOV)では、麻は農業用(産業用)と薬用に区別して扱われ、農業用であれば品種試験の手順書に従って新品種の登録手続きが進められる(12年~)。
こうした事態に対して、WHOは今年11月にカンナビノイドのうちCBDを麻薬指定物質にするべきかどうかを検討することを発表した。また、大麻の麻薬指定の手続きの見直しに向けて専門委員会を18カ月以内に設置して、検討を進める意向を示している。
日本は、最新の科学的知見よりも、形骸化した国際条約に即した立場で大麻を全般的に禁止する姿勢を固持してきた。大麻取締法の規制のもと、栽培試験はおろか、利用拡大を模索することも難しいのが現状である。世界的にTHC濃度が0.3%以下の品種に限定される産業用ヘンプが広がるなかで、THCの国際評価が定まれば、日本でも産業用ヘンプの安全性が理解されやすくなるのではないだろうか。かつては全国各地で栽培され、幅広く利用してきた歴史を持つ我が国には、麻、さらにはカンナビノイドを積極的に研究し、人類にどのような貢献ができるかについて国際社会の議論をリードする役割を期待したい。

5
産業用ヘンプを取り巻く
問題と可能性


パトリック・コリンズ氏
1952年イギリス生まれ。ケンブリッジ大学で理学と経済学を学んだ後、インペリアル・カレッジの経営学部にて修士号、博士号を取得。研究太陽発電衛星および宇宙旅行の経済性についての研究を行なう。一方で日本の麻に興味を持ち、麻が地方を創生し、しかも地球環境にとっても優れたビジネスであるという立場で研究を続けている。99年より麻布大学で教鞭を執り、生命・環境科学部環境科学科・環境経済学研究室・教授を務める。

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