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「みずほ」に出荷する農業者は、「みずほ」という舞台を借りて、自分の農産物を販売している。農業者は舞台を使う権利があるが(権利金30万円)、それは売り場に対して責任を持つことであり、最低販売額に達しない場合は違約金を払う仕組みだ(権利金から差し引く)。逆に、売上1000万円を達成すれば、報奨金がもらえる。努力した分、報われる仕組みである。
第3に、商品としてふさわしくないものを出荷した農業者は、自己回収を義務付けられる(鮮度が落ちた商品など)。「みずほ」の従業員が店内を見回って問題がある商品は、出荷農家が自らの商品を販売価格で買い取らなければならない。これが「商品管理ペナルティ制度」だ(2000年導入)。この制度を実施してから農業者の品質管理への意識が高まり、クレームも減った。
多くのルールがあるが、いずれも出品農産物の品質を高めていくメカニズムが働いている。筆者が思うに、「安売り禁止」ルールが、一番大きな効果があるのではないか。
(4)品質の山が高いとき
価格決定権が生きる
価格は市場で決まる、と考えるべきだと思う。品質に対応して値が付いているだけであろう。生産者が価格決定権を持つといっても、低品質・高価格なら直売所に人は集まらない。品質に対応したリーズナブルな価格になっているとき消費者は集まってくる。生産者が価格を決めたことにはならない。
直売は自己主張ができ、価格を自由に高く設定できると思うのは錯覚である。流通経費を生産者が所得化できるので、農家価格が高くなっているのであり、そして、価格はあくまで品質に対応したものであって、市場価格から乖離しているわけではない。直売所といえども、自分で自由に価格が付けられるというマジックがあるわけではない。
図2に例示するように、直売は、生産者が流通経費分を所得化できる。当然、農協向け出荷より高い値段で売ることができる。この例示でいえば、仮に小売価格が同じであれば、農協向け出荷の1.8倍も高い値で売れる。直売は、農家価格が高くなるから、生産者にとっては大変良い仕組みである。
もう一つのポイントは、製品差別化の強化によって、“非価格選好”の消費者層を増やすことだ。消費者は、価格で選ぶ人と美味しさで選ぶ人に大別される。所得制約から、安いものを求める人もいるが、逆に、美味、安全・安心なものであれば、高くても買う人がいる。後者の「非価格選好」の消費者が1割はいる(筆者の実証研究)。もっと高い農産品もあろう。
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叶芳和 カノウヨシカズ
評論家
1943年、鹿児島県奄美大島生まれ。一橋大学大学院経済学研究科 博士課程修了。元・財団法人国民経済研究協会理事長。拓殖大学 国際開発学部教授、帝京平成大学現代ライフ学部教授を経て2012年から現職。主な著書は『農業・先進国型産業論』(日本経済新聞社1982年)、『赤い資本主義・中国』(東洋経済新報社1993年)、『走るアジア送れる日本』(日本評論社2003年)など。
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