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(注)工業製品の場合、消費者の5%は非価格選好である。例えば、乗用車の場合、国産車ではなく、国産車より100万円も高い輸入車(欧
州車)を買う人たちがいる。日本も、中国も、ユーザーの5%はこうした非価格選好である。食べ物の場合、安全・安心・美味を求め、この割合はもっと高いであろう。実際、例えばJA鹿児島県経済連は、一般豚より価格が高い黒豚の割合を県養豚全体の1割と目標設定している。この比率をもっと高めると値崩れの危険がある。
非価格選好層の割合が多い場合、生産者が価格を設定する自由度は高まる。トマトやメロンなど、美味しさの格差が大きく誰でも違いがわかる場合、非価格選好層の割合は増え、需要の壁が高くなるので、生産者は一般品より価格を高く設定しやすい。先述の片岡喜徳氏のトマト価格はそのよい例である。しかし、コメや野菜では美味しさの区別がそれほど大きくないので、非価格選好の割合は相対的に低く、価格をあまり高くすることはできない。
直売の仕組み(自分の責任で値を付ける)を活かして、生産者が所得を高めるには、より品質の良いものを供給する必要がある。良食味の山の高さを高くしていけば、価格を高くでき、農業経営者の所得は増える。
「みずほ」は、農業で食っていける直売所になっている。それを実現すべく、競争市場を活性化させる直売所ルールをつくった長谷川久夫氏は、農産物直売にイノベーションを起こした。単なる生産者を「農業経営者」に変える夢は実現したといえよう。
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叶芳和 カノウヨシカズ
評論家
1943年、鹿児島県奄美大島生まれ。一橋大学大学院経済学研究科 博士課程修了。元・財団法人国民経済研究協会理事長。拓殖大学 国際開発学部教授、帝京平成大学現代ライフ学部教授を経て2012年から現職。主な著書は『農業・先進国型産業論』(日本経済新聞社1982年)、『赤い資本主義・中国』(東洋経済新報社1993年)、『走るアジア送れる日本』(日本評論社2003年)など。
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