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農水省の総合農協統計表には、佐賀県内4農協を対象にした数字がある。今回のベと病禍が起きる前の10年度と16年度を比較してみた。案の定というか、信用・共済の担当職員が11%増えているのに対し、営農指導員は39%も減っていた。
もう説明の必要もないだろう。合併に伴う組織再編で赤字垂れ流しの営農指導部門の担当者を大幅に減らし、その一部を収益源の信用・共済部門に配置したことだ。その結果が、ベと病処理で初動が遅れ、その後の対策も後手後手に回り、農家に大きな痛手を負わせた。
14年度33億円、15年度44億円、16年度49億円。ベと病被害が拡大する中でのJAさがによる農薬販売額である。わずか3年で1.5倍にも増えている。JAさがの発足前、ベと病の発生面積ははるかに少なかった。発生面積ベースなら7分の1ぐらいしかなかった。それを考慮すると、農薬販売額はもっと少なかったので、その頃との比較なら、2倍以上になっていても不思議ではない。
販売された農薬がすべて使われたものとすると、JAさがのタマネギ農家は使用量や使用回数を定めた農薬使用基準に違反していたことになる。そうしたタマネギが市場に出回りながら、誰もチェックできなかったというのは、消費者をなめた話である。
佐賀県のタマネギ農家は、少なくとも今後10年間、ベと病に悩まされることになる。罹患株を圃場の道端なり水路端に廃棄、放置、野積みしたしっぺ返しだ。16年のように低温で湿度の高い天候が続けば、また被害に見舞われることになる。佐賀県、佐賀県農協組織の責任は実に重い。
グローバルGAP
認証取得を煽った進次郎
農水省は18年度予算で「GAP拡大の推進」を名目に8億8300万円を財務省に要求した。この8月で自民党農林部会長をお役御免になった小泉進次郎議員の置き土産。この5月、農林部会長だった進次郎は、党の農林部会と、自ら会長を務める農林水産業骨太方針実行プロジェクトチームなどで「GAP拡大の推進」を提言していた。
GAPとは農場を対象にした生産や出荷での工程管理手法のこと。「農産物の生産や出荷の過程で、病原性物質や有害物質が混入しないよう生産者や流通業者などに対し管理のポイントとなる基準をまとめており、第三者が審査、認証する制度だ。
GAPの必要性が叫ばれて20年近くになるが、いっこうに普及していない。理由はいくつかある。煩雑な書類作成が必要であり、高額のコンサルタント料などがネックになっている。何よりも、コストをかけた割には、農産物が高く売れないという現実的な問題もある。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
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