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主導権を握ったのは、英国とドイツなど北ヨーロッパ諸国の流通・食品企業だった。EUでもラテン系の国は、どちらかというと冷淡。グローバルGAPを採用する企業数の国別リストにも表れている(表1)。
グローバルGAPを採用する企業は世界で48社。もっとあるかと思っていたが、意外と少なかった。トップ3のドイツ、英国、オランダはいずれも北ヨーロッパだ。それでも3カ国合わせてたったの21社しかない。お膝元でも、採用する企業は多いとは言い難い。
EUのラテン系国では、スペインしかない。食の大国であるフランスやイタリアのスーパーや外食産業などは、グローバルGAPを相手にせずというスタンスだ。これについてとても分かりやすいレポートがある。筆者は農水省研究総務官や国連食糧農業機関(FAO)日本事務所長を歴任した高橋悌二氏。氏の指摘はグローバルGAPの限界を見事に突いている。
「グローバルギャップの大きな問題点は、基準遵守に伴う農業者の追加コストが産品の価格を通じてカバーされるのかということである。この場合、大手小売業の強力なバーゲニングパワー(交渉力)によって、しわ寄せが生産者(農業者)に行きやすいことと、さらにコストを負担できない小農に不利に働きはしないかという問題がある。ヨーロッパラテン系の国で発展してきた品質証明制度は消費者に価値を提案し、証明して、製品価格を高めるという原理(差別化)に立脚している。しかし、グローバルギャップは製品に付加価値をつけるという考え方をとっていないので、追加コストが流通業、生産者および輸出国間で公平に負担されうるのかという問題を抱えている」
ラテン系諸国の農畜産物価格を高める差別化戦略について調べてみた。「フランスの美食術」として料理から食事作法までユネスコ無形文化遺産に認定されたフランスは、グローバルGAPには見向きもせず独自の認証制度を整備してきた(表2)。その根幹は、グローバルGAPのように生産工程を認証するのではなく、安全性はもちろんのこと農畜産物の本質である食味に深く着目している点が興味深い。わが国が目指すとしたら、これらフランスの制度である。「和食」もユネスコの無形文化遺産に認定されたという同じような背景もある。
GAP推進に
未来はあるのか
進次郎の思いつきで始まった「GAP拡大の推進」は、100%失敗に終わり、そのための予算支出は無駄金に終わってしまうだろう。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
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