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【新・農業経営者ルポ】
本農業法人協会初代副会長とその懐刀が作り上げたオール秋田ビジネス
- 代表取締役社長 (株)秋田ニューバイオファーム 鈴木幸夫
- 第160回 2017年11月02日
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鈴木が意識したのは話題性だった。一例を挙げると、水田転作の一環で作付けしている菜の花は、観光農園への誘客で無料公開するだけだったが、自前の機械で搾油することでストーリー性を持たせた菜種油を販売できるようになった。また、秋田県と山形県にまたがる鳥海山に菜の花を咲かせる産官学連携の研究会にも参画した。今年で8回目が開催され、多くのカメラマンが集まるなど認知度は回を追うごとに高まっている。連作障害の回避にあたってはソバを取り入れ、観光農園内のレス
トランで手打ちした十割蕎麦を振る舞えるようにした。このように、鈴木は齋藤が突き進んできた路線を踏襲しながらアクセントをつけている。
将来を背負って立つ
社員の台頭に期待
これだけ盛りだくさんの事業展開となると、現場で働いているスタッフに自然と興味がそそられる。取材時に駐車場から事務所、そして観光農園内のショップ、レストランと移動する折に見かけた人たちは女性ばかりだった。農業生産がメインの会社ではないのだから驚くことはないが、こうした人材や雇用の話になった途端に鈴木は不安な表情をのぞかせた。
「人材不足っていうけどほんとそうだね。社会保険とかは完備しているんだけど、東京の人材会社経由で募集してもなかなか来ないね。秋田のほうもシルバー人材センターからの派遣が多くて事業協会から表彰されるくらいだよ。若いのと年寄りが支え合っているのがウチの特徴かな」
社員は38人に上る。そのなかで県外からのUターン組で唯一大学院まで進み、現在は観光農園内のグリーン部に配属されている男性スタッフのエピソードを明るい顔で紹介してくれた。
「観光農園内の花が咲き乱れてブドウももぎ取れる時期になると、『休み取ってんのか』ってことがあるんだよね。以前、労働基準監督署に抜き打ちで立ち入り調査されたとき、彼のタイムカードは表裏びっしりで、1日も休んでなかったの。『君の気持ちは非常にうれしいんだけど、世の中これで通らないから休んでくれよ』って伝えたよ。朝、俺が出社したら7時とかにもう来ているんだ。園内のレイアウトも剪定もそうだし、ほとんど自ら発案して一人でこなせちゃうから大したもんだよ」
齋藤の度重なる提案にもその都度うまく対応してきたなんでも屋の鈴木にとっても、彼は頼もしい存在に違いない。鈴木は常日頃、社員にこんな言葉を投げかけている。
「年がら年中同じ仕事はないから、自分方で仕事を作れ」
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鈴木幸夫 スズキユキオ
代表取締役社長
(株)秋田ニューバイオファーム
1952年、秋田県西目町(現・由利本荘市)生まれ。秋田県立西目農業(現・西目)高校卒業後、実家で就農。87年、(農)秋田ニューバイオファーム入社。07年、(株)秋田ニューバイオファームの代表取締役社長就任。11年から由利地域観光振興会会長も兼務する。
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