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長野県の自給圏構築の展開と
大学・民間の参画
本通信の第3回で報告したように、長野県農政部は、阿部知事のアドバイザーに就任した松尾雅彦会長の指導により、地域食料自給圏実証実験事業プロジェクトチームを設け、今年からスマート・テロワールの仮説に則った実証実験を始めた。
今後5年間で、(1)小麦・ジャガイモ・大豆・トウモロコシの4作の畑作輪作の実証、(2)畑作穀物の規格外品を豚の飼養試験に供し、豚の糞尿から得る堆肥で畑に供する耕畜連携の実証、(3)畑作輪作体系および養豚の経営的評価、(4)製品の加工・販売の実証、(5)地元加工製品の消費形態を想定するための消費調査を行なう。
スマート・テロワールの基本的な構図は図1のとおりである。全体を主導する組織やプロトタイプをつくるチームは地域によって異なる。山形では山形大学主導だが、長野県では行政主導である。県が土台をつくり、順次、大学や生産者、加工会社、流通、市民が参加していくという流れで進められる予定だ。
すでに大学が参画している。(5)の調査については、長野大学環境ツーリズム学部の古田睦美学部長が委託を受け、今年から大豆、小麦、ジャガイモを使用した製品の市場調査をする。
また市民団体も参加に意欲的だ。長野県のNPO法人信州まちづくり研究会の副理事長・事務局長の安江高亮氏によると、今後、NPO会員などで結成された「東信自給圏をつくる会」(仮)を、一般社団法人として組織化し、行政や大学と連携を取りながら、民間として活動を展開していきたいという。現在、意欲ある人々を募っている。
視点
松尾 雅彦
スマート・テロワール協会会長 元カルビー社長
【衆院選、明確になった「立憲民主党」の立場】
このくだらない選挙の中でも、民進党が分裂して、立憲民主党が発足したことは意義深いことだ。
保守勢力に対して、革新リベラル政党が対抗していなければ社会の健全性は維持できない。プラザ合意で日本経済が暗礁に乗り上げて以来約30年間、軸のブレた政権の受け皿を目指すという政党が出現して、社会の不安定の原因となってきた。1979年に発足した松下政経塾は松下幸之助氏が保守政治家を育成するための組織であったから、政経塾の出身者は保守政党で活躍すべきところ、自民党は二代目・三代目として地盤を形成してきた者の砦で、政経塾出身者の登竜門は開かれていなかった。
小選挙区制に転換した機と重なり、保守党に門戸が開かれていなかったので新党をつくり政権の奪取に成功したが、保守政治家と革新政治家の雑居部屋ではほどなく内部分裂で政権は瓦解し、以降難破船の状況が続いていた。その間に年金問題という行政側の失敗が発覚し民主党政権が誕生したが、不運にも世界はリーマン・ショックに見舞われ、欧米の金融当局者の協力で金融システムの安定を回復していた日本が、ドルとユーロのピンチを助ける立場に立ち、激しい円高の3年間を民主党と共に経験することとなった。リーマン・ショックの傷が癒えて、為替相場で円を元のポジションに戻そうという国際金融界のリーダーの談合が日本で行なわれて、いろいろ円安に転換しようとしていた矢先に、当時の野田総理は衆院の解散を決めてしまい、黒田総裁の異次元金融緩和の登場、つまりアベノミクスとなったが、今、保守政治では解決できない事態、「働き方改革」問題が浮上してきた。
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松尾雅彦 マツオマサヒコ
カルビー(株)
相談役
1967年カルビー入社。宇都宮工場長、取締役を経て、80年カルビーポテト設立と同時に社長就任。北海道を中心に全国でジャガイモの契約栽培と貯蔵体制を確立し、ポテトスナック原料調達システムを整備する。92年カルビー社長、06年から相談役。08年10月食品産業功労賞受賞。NPO法人「日本で最も美しい村」連合副会長を務める。
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