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特集

持続可能な農業・農村へ


放牧で豊かに(2)
無更新で生物多様性を育む牧草地
低コスト・高効率なグラスファーミング

今井 真人氏(69)北海道別海町

いかに草を乳に変えるか。野生の鹿が草を食べるように牛も草を食む。エネルギーコストも労力も減らした「グラスファーミング」。

今井氏は、神奈川県に生まれ、1974年に別海町で新規就農した。就農前、大学を1年間休学し、酪農の実習のためにカルフォルニアに渡った。
カルフォルニアの酪農は、極めて企業的で集約的な放牧だった。今井氏の実習先で見た牧場はこうだ。広大な土地に1200頭の牛が放牧され、牛を追うカウボーイがいる。牧場全体は日本の水田のように傾斜をつくって灌漑施設を設け、エアレーション(空気を送ること)で糞尿を液肥化している。草はアルファルファとマメ科のルーサン、穀物はデントコーンで、放牧と穀物を組み合わせ、高カロリーの飼料を与えている。頭数が多いので、一つの牧場に東西2カ所にミルキングパーラー(搾乳施設)があり、24時間体制で搾乳している。
当時、別海町周辺では1軒当たり50頭飼っていれば大きいほうで、馬を使って草を刈っていた。今井氏は、日本と比較しようのないスケールに圧倒された。

【耕す草地から生物多様性のある草地へ】

帰国後、カルフォルニアで見た放牧を目指す。「餌1kgより乳1kgのほうが良い」という考え方のもと、ルーサンとデントコーンのほか、輸入穀物の配合飼料も多めに与えた。農業の基本は土を耕すことだと、プラウで耕起してデントコーンやルーサンを播き、除草剤を撒いた。しかし、気候風土が合わず、投入する堆肥や肥料、エネルギーばかりが増え、年中、働きずくめの毎日だった。
今井氏は、放牧に電気柵を使った先駆者である。しかし、当時の電気柵は漏電したり切れたりして、たびたび牛が脱柵し、近所に謝りに行くこともあった。
苦労ばかりしていたとき、小谷氏(Part1参照)がニュージーランドの酪農家で、電気柵の営業をしている人を連れてきた。
「その人は、いまでも先生だと思っている。知的で探求心があって、信条的ではなく、科学的なマネージメントができる人だった。当時、私がやっていたことは、ことごとく馬鹿にされた。いまでこそ持続可能という言葉が使われるようになったが、30年以上前の当時、まさにその話をしていた」
日本の酸性の高い火山灰土壌ではルーサンではなくチモシーが良い。草地を畑のようにプラウで耕さなくても、代わりに土壌微生物が土の耕うんをする。牛は、表土に生えた多様な草を食べて糞をし、その糞を土壌微生物やミミズなどの土壌動物が分解する。そうすれば生物多様性のある豊かな土壌ができる。

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