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水田農業崩壊をどう解決する?

現実を直視し、“できない理由探し”はもう止めよう

  • 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
  • 第1回 2017年11月02日

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平成30年度から国によるコメの生産調整配分が廃止される。さらに10 a当たり7500円の直接支払いもなくなる。農業界ではこれを「平成30年問題」などと称して「営農の継続が困難になる」という理由から新たな政策的対応を期待する向きもある。しかし、今ですら過剰な水田農業への政策的支援をこれ以上に継続拡大することは、むしろ我が国の水田農業をもろくするだけである。
平成30年とはいわゆる団塊の世代がすべて70代になる年でもある。機械化が進んだとはいえ、おおむね75歳になるとほとんどの農家は農業を辞める。ということは、これからの5年間で高齢農家の離農が一気に進み、膨大な水田農地が供給されることになる。
本誌の読者たちによれば、かつては年に数ha程度の規模拡大であったものが、ここ数年は年に10~20 haの拡大も珍しくないという。これまで地域の農地の管理を請け負ってきた担い手農家の高齢化が進み、彼らがまとめた農地の管理をより若い担い手農家に任されるようになるからである。
一方、農水省は「集落を単位として農業生産過程における一部又は全部についての共同化・統一化に関する合意の下に実施される」いわゆる「集落営農」を組織化することを進めてきた。しかし、この集落営農も経営者の高齢化が進むとともに、すでに経営破たん状態にある組織が少なくない。農家一般の高齢化問題に加えて集落営農の経営破たんに対する対応が今後の我が国の水田農業の行方を左右するであろう。

破たんする集落営農

農水省は今年3月末に平成29年2月1日現在の『集落営農実態調査』を報告している。
同報告では「集落営農数は1万5134となり、前年に比べ281(1.9%)増加した。このうち法人の集落営農数は4217となり、前年に比べ595(16.4%)増加した。非法人の集落営農は1万917となり、前年に比べ314(2.8%)減少した」とある。
何気なくこの報告を見ると、集落営農の増加やその法人化率の向上などが示されることでいかにも農業の集落組織による営農を進める政策の効果が出ているかのように見える。
しかし、この実態調査結果は、集落営農組織の経営破たんを予言するデータとしてみることができる。そして、この経営破たんの対処の方法いかんによっては広大な農地が荒廃するばかりでなく、地域農業の崩壊にもつながりかねない。

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