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水田農業崩壊をどう解決する?

現実を直視し、“できない理由探し”はもう止めよう

  • 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
  • 第1回 2017年11月02日

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集落営農の中にも優れた経営者を擁し、経営的にも安定して未来に向かう経営を作り上げている組織もある。しかし、集落営農の多くは集落営農にすることで「経営所得安定対策」の恩恵にあずかることができるという理由で組織化されたものが大多数なのである。農協や行政主導のもとで経営者不在のままに集落営農組織が作られていった経緯を考えれば、その行く末が破たんであることはもとより想定できた。さらには経営センスのあるリーダーが存在する組織においても代表者の高齢化が進んでおり、少なからずの集落営農は平成30年度以降の水田政策の変化に対応ができず経営が困難になっていくのではあるまいか。
集落営農は平成14年に農水省がまとめた「米政策改革大綱」の中で、集落営農のうち一定の要件を満たすものを「集落型経営体」と認め、認定農業者と同様の担い手として位置づけられた。その後この規定はなし崩しにされてしまったが、当初は要件として「5年以内に法人化すること」が義務づけられていた。にもかかわらず平成29年2月現在で、法人化された集落営農数は4217であり、法人化率は27.9%に過ぎない。
個人事業において「法人化」は必ずしも経営の健全化の指標となるものではないが、法人化ができなければ「経営所得安定対策への加入」という集落営農組織に対する恩典を得ることができない。
集落営農の活動内容の主なものは、「機械の共同所有・共同利用を行う」が79.6%と最も高く、次いで「農産物等の生産・販売を行う」(75.5%)、「作付地の団地化など、集落内の土地利用調整を行う」(57.1%)の順となっている。
なお、法人では「農産物等の生産・販売を行う」が98.7%と最も高くなっている。機械の共同利用は生産コスト低減に一定の効果をもたらすと思われる。しかし集落営農組織化の多くは、営農の継続が目的であり、マーケットに求められる事業活動を目指しているとは言い難い。
最初に述べた平成30年度からの水田政策の変化はこうした集落営農の経営を危うくさせるであろう。これに対して平成27年度から新たに「日本型直接支払制度」という制度を作り、それを利用すれば水田では最大10 a当たり9200円を支払うとしている。
しかし、こうした政策的配慮にかかわらず、平成28年の基幹的農業従事者の平均年齢は66.8歳である。平成30年には団塊の世代が70歳以上になる。そして彼らは5年後には皆75歳以上になるのである。この高齢化という決定的条件によって現在それなりの活動をしている集落営農においても経営破たんあるいは組織の継続が困難になっていくと考えるのが常識的な見方ではないか。オペレータとしての年齢というより時代の要請に合わせて農業経営を行なえる人材の存在が問題なのである。

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