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水田農業崩壊をどう解決する?

現実を直視し、“できない理由探し”はもう止めよう

  • 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
  • 第1回 2017年11月02日

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「集落営農活動実態調査」の平成27年度版によれば、「集落営農の約6割は後継者確保が困難」であるというデータが示されている。これによって現在、経営的に安定している組織においてもその大多数は破たんへの道を歩まざるを得ないのである。
ところで、「日本型直接支払制度」の精神が「農業の多面的機能の維持・発揮のための地域活動や営農活動に対して支援」することであり、必ずしも高い収益を上げることを目的とするものではない。さらに、これまでの「中山間地域等直接支払」や「環境保全型農業直接支援」などがあったとしても、マーケットに対して有意な存在となりえない限り経営の継続は不可能であり、集落営農の少なくとも3割あるいは半分程度が破たんすると考えるべきだろう。
こうした事態を避けるために、国そして自治体の政策担当者は、集落営農のM&Aについての手法の検討を進める必要がある。同時に、意欲ある農業経営者にとってはこれまでの常識をはるかに超える大規模農業経営実現のチャンスとして地域の農業構造や高齢化の現状をよく観察し、3年後、5年後から逆算した経営計画を考えるべき時なのである。農水省は減反の手法として飼料米生産の拡大をうたい、地方レベルでそれに地域加算をするような例もみられるが、誰にでもできる飼料米生産で高齢農家を延命させたとしても、それはむしろ本来行なわれるべき水田農業の改革を遅らせることになるに過ぎない。

高齢化の進行は改革のチャンス

高齢化の進行は、戦後、農地改革によってもたらされた農業経営構造を大転換する好機であり、戦前の農業経営者そして農村の経営者であった地主階層の果たしていた役割を担える本物の土地管理型農業経営者の登場の条件が整うのである。
筆者はこれまでの我が国の農業政策を“農業の安楽死”を目指すものだと批判してきたが、ついにその時が来てしまったのだ。
「水田の持つ多面的機能を維持するために」あるいは「集落機能を維持するために」などという美辞麗句を並べて進められてきた農村政策であるが、それは結局、農業・農村を病院のベッドに縛り付けられた老人に未来のない延命治療を続けていくのと同じことになるのである。集落機能とはその自立的な経済基盤があってこそ保たれるのである。政治的にどれだけ「農業を守れ!」「集落を守れ!」と叫び、農業・農村に対して財政負担を増やしたとしてもそれを維持することは不可能だ。また、一定の財政負担は行なうにしても、農業・農村を担う経営主体が誇りをもって時代が求める産品やサービスを提供する能力を持ち、その努力があってこそその財政負担は許されるものであろう。

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