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「あの人たちに割り箸で食べてもらうわけにはいかない……」
今回のお客さんのお店で
僕たちがご飯をいただいた時
とても美しいお箸が用意されていたのを思い出しました。
シンプルな竹箸でしたが
先が細く角があって料理が滑らず
その使い心地が子供たちの記憶にも
印象が強く残っていました。
よく似たお箸を
九州の業者さんが販売されているのは知っていたのですが
こちらは受注生産で納期は3週間。
到底明日のお客さんには間に合いません。
「もう間に合わんから普通の割り箸でええやん」という大人の意見に子供たちは「NO!」
「じゃあどうするの?」
との問いに子供たちが出した答えが
「今から作る!」
幸い子供たちが数年前弓矢や刀を作っていた頃に切り出していた竹が
良い具合に乾燥しており早速製作に着手することができました。
しかし自分たちで使うものとは違い仕上げはきっちりしないといけないので研磨などの作業は夜遅くまで続きました。
出来上がりは素晴らしく
お客さんは
こちらからその話をするまで
子供たちが手作りしたことには
全く気が付きませんでした。
当日は朝から包丁を研ぎ直し
段取りや仕事の進め方を
細かく書いたノートを作り
そのまま休憩もせず
最終の下ごしらえに突入。
そして最後のデザートまで
しっかりこなしました。
全てが終わり
さすがに立ったまま寝られそう
と言いながら
余った材料で仕事の手伝いをした
12歳と7歳の弟妹に
お客さんに出すのと同じように丁寧に賄いを作ってやっているのには
僕も心底感心しました。
今回、料理のクオリティーや
ボリュームを確認するため
僕もお客さんと一緒にテーブルにつき食事をさせていただいていたのですが
それぞれ一つ一つ丁寧に作られており素材の味も生かされていたし
ボリュームや出すタイミングも大変よくできていました。
途中お客さんに
「どう育てたらこうなるのですか?」と聞かれましたが
このような結果を生んだ理由は僕にもよくわからず
答えられませんでした。
しかしこういう機会に思い起こしてみると
子供たちが夢中になっていることに対して道具を揃えてやったりと
応援はすれどそれに対して「あまり結果を求めない」ということには常に気を使ってきたように思います。
子供にとって結果というのは
良いことも悪いことも人生においてのほんの一瞬の出来事で
単なる過程の一つに過ぎません。
素晴らしい竹の刀を作って
大人が素晴らしい評価をしても
3日もすればその素晴らしい刀が
そこらへんに打ち捨ててあって
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山本晋也 ヤマモトシンヤ
副村長
みわダッシュ村
1968年、京都生まれ。美術大学を卒業して渡米後、京都で現代美術作家として活動。そのかたわらオーガニックレストランを経営するも食材を種から作ってみたくなり、京都市内で畑を始める。結婚して3人の子供を授かったころ、農業生産法人みわ・ダッシュ村の清水三雄と出会い、福知山市の限界集落に移住。廃屋を修繕しながら家族で自給自足を目指す。土と向き合ううち田畑と山や川、個人とコミュニティーの関係やその重要性に気がつき、田舎も都会もすべて含めた「大きな意味での自給」を強く意識するようになる。この考え方は、美術家時代にドイツの現代美術家ヨゼフボイスのすべての人が参加して創り上げる社会彫刻という概念に影響を受けた。現在みわ・ダッシュ村副村長。
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