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これらの緑肥を鋤き込んだ場合、カリは水溶性イオンとして存在するので、そのまま施肥量にカウントすればよい。一方、窒素とリン酸は有機態となっているので、緑肥が土壌中で分解して緩効的に肥効を示す。なお、緑肥は土壌より炭素率が高いので、分解初期には窒素の有機化が生じるが、通常2~3週間の分解期間経過後に播種や定植を行なうので、窒素飢餓による生育障害を受けることはなく、その後の野菜生育に伴い窒素が無機化する。
野菜収穫後に緑肥を作付けると、驚くほど多くの養分が残っていることや、生育状況のむらからハウスや畑内の養分分布の偏りがわかる。緑肥が回収したこれらの養分を刈り取って持ち出すなどもっての外だ。
3.緑肥の有機物補給効果
表1のセルリーハウスのソルゴーを鋤き込むと、その中には510kg/10aの炭素が含まれている。それを表2の家畜ふん堆肥の平均炭素含有量から計算すると約3t/10aに相当する。大量の堆肥をハウス内に運び込み、それを拡げる手間を考えると、播種だけで済む緑肥は農作業の省力化にもなる。また、新鮮有機物である緑肥の鋤き込みは土壌団粒化促進にも役立つ。さらに、大気中の二酸化炭素を吸収して育った緑肥の鋤き込みは、土壌中へ炭素を貯め込むことになるので、地球温暖化抑制にも寄与できる。
4.緑肥と他資材との相性効果
緑肥に限らず有機物を土壌中に鋤き込むと土壌動物や微生物の作用で徐々に分解され、タンパク質はペプチド、アミノ酸、アンモニア態窒素を経て、畑条件では最終的に硝酸態窒素となり作物に吸収利用される。その際のアンモニア態窒素から硝酸態窒素への変化は速やかだが、土壌中にゼオライトが混在すれば、アンモニア態窒素がゼオライトの構造内に取り込まれる。そのため、硝酸化成細菌から隔離されて硝酸化成作用が抑制され、リサイクル窒素成分の肥効がより一層向上する。また、ゼオライトにはカリウムイオンを吸着する特性もあるので、特に雨水や灌水により肥料成分が溶脱しやすい砂地ではゼオライトが緑肥のよきパートナーとなる。
最近、アブラナ科野菜根こぶ病対策資材として転炉スラグの普及が進んでいるが、それに葉ダイコンの作付けを加えると鬼に金棒だ(図1)。ダイコンや葉ダイコンの根には、根こぶ病の病原菌(休眠胞子)をちょうど掃除機のように吸い取り、土壌中の密度を減らす効果がある。転炉スラグが作り出すpH(H2O)7.5程度の高pH条件で発病を抑制し、残留した休眠胞子を掃除機で吸い取るしくみで、大きくなった葉ダイコンを緑肥として鋤き込んでも休眠胞子が増える心配はない。
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後藤逸男 ゴトウイツオ
東京農業大学 名誉教授
全国土の会 会長
1950年生まれ。東京農業大学大学院修士課程を修了後、同大学の助手を経て95年より教授に就任し、2015年3月まで教鞭を執る。土壌学および肥料学を専門分野とし、農業生産現場に密着した実践的土壌学を目指す。89年に農家のための土と肥料の研究会「全国土の会」を立ち上げ、野菜・花き生産地の土壌診断と施肥改善対策の普及に尽力し続けている。現在は東京農業大学名誉教授、 全国土の会会長。
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