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業務スーパーは、兵庫県稲美町に本社がある神戸物産が経営する。全国に700店舗を展開、16年10月期の売上げは2127億円(単体)、経常利益61億円(同)の優良企業だ。社名に「業務」を使っているが、一般客が大半で、鶏肉ならブラジル産、野菜なら中国産が目立つ。よって価格は激安ということになる。
高級スーパーがGAPに背を向ける理由
ドイツのスーパーでグローバルGAPを採用するのは6社。高級感のあるスーパーは1社もない。扱う商品は、品質的に中以下。よってスーパーの格も、日本なら激安が売り物の業務スーパーか、それよりちょっと上のクラスのイオン程度だ。
一方の英国は少し事情が違う。ドイツ同様に、英国版「業務スーパー」や「コストコ」のようなディスカウント・スーパーが主流だが、ミドルアッパーのマーク&スペンサーやセインズベリーの名前がある。
英国は、野菜や果樹の生産が盛んでなく、マーク&スペンサーのようなスーパーでも、オランダやスペインなど以外に、英国から遠く離れたアフリカやラテンアメリカ諸国からも輸入野菜を扱う。それら地域からの野菜輸入は英国全体の20%に達する。そうした地域から輸入するには、GAPを使っての衛生管理が必要なようだ。
着目すべきは、フランスやイタリアの企業が一覧表に1社もないことだ。
フランスには、大手クラスのスーパーが6社ある。その一つ、日本でも有名なカルフールは、グローバルGAPがEUREPGAPと名乗っていたときにはスペインのグループ会社がメンバーだったが、一覧表にその名がないということは、GAPをやめたということである。
フランス勢は、他の5社もカルフールと同様に、グローバルGAPには関心を示さないのだ。その理由も含めてフランスの品質認証制度については次号以降で触れることにしたい。
その調査結果を示しながら、及川課長に、グローバルGAPを採用するのは、業務スーパーのようなディスカウント・スーパーが主流という事実を調べたことがあるかと質問してみた。
質問になると多弁になる及川課長、しばし沈黙、返事を急かされると、「調べていませんでした」と正直に告白。農水省の補助金行政は、先に予算獲得ありき、理屈はあとからつけてやるという納税者をまるで小馬鹿にした手法を見せつけられた思いがする。
ニーズがないグローバルGAP
次いで進次郎発言の問題点。彼の発言で腑に落ちないのは、やたら「グローバルGAP」と連呼していたことだ。グローバルGAPは、世界にいくつかあるGAP運営組織の一つで、しかも純然たる民間組織だ。その数は、農水省の「GAPをめぐる情勢」文書にも、世界中に10の運営組織があると書いている。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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