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「借りるのは経営方針に合わないので、稼いだカネは田んぼを買うのに注ぎ込んできた。でも、俺みたいな一生懸命やっている連中が困るような政策がまだ続くもんだから、思ったほど離農が進んでいないんだよね。最近は近場の人から頼まれるのが増えちゃっているよ」
30a区画のような狭小圃場では非効率なため、合筆を前提にしている。それに反対する農家はほとんどなく、農地を管理してくれれば結構という状況だそうだ。自身はレーザーレベラーを駆使し、半分以上を1ha区画に整備している。
そのレーザーレベラーは乾田直播を実施する目的で10年ほど前に購入した。東北土を考える会のセミナーで情報に接し、一種のあこがれから機械の導入に踏み切る。ところが、羽後町では上述のとおり、雪と抗わないほうがカネになる土地柄であり、対峙すれば痛い目を見ることになりかねなかった。
「ここら辺で一番乾直が普及しているのは大潟村だけど、3月っていったら一つも雪がないもんね。でも、ここは内陸部の豪雪地帯だから、4月の中ごろまであるのよ。うまく最後まで行けたのは3回だね。去年も今年も、レベラーとロータリーを経てケンブリッジローラーで入ったら、ローラーに土がべったべったに付いちゃってすぐに撤退。水を入れて代かきしたよ(笑)。乾直は能率的だし、収量も移植と同等かそれ以上だからいいんだけどね。湛水直播も多いんだけど、収量は安定しないね」
3年に一度を目安にどの重粘土圃場にもローテーションでレーザーレベラーによる均平が回るようにしているため、都合がつけばそのまま乾田直播に移行できる。無理なら炭を圃場にばらまき、透水性の改善に努めて移植の準備に入る。
移植に用いる苗は、件の農作業受託会社に播種を委託し、育苗から自前のビニールハウスで管理する。コストが余計にかかっても、乾田直播を第一優先に、移植を保険として位置づけている。
貯蔵については、所属農協のカントリーエレベーターも利用してしのいでいるのが現状だ。1シーズンにおよそ120tを押し込んでいる。50 haをこなす容量を満たしていないともいえるが、これは来夏までにライスセンターを増設することで対処するつもりでいる。
「カントリーを使うのも自分で建てるのもカネは要るけど、ライスセンターならウチの中で回せるでしょ。その分、効率も良くなる。面倒臭くしないためにも、今回は全額自己資金でやろうかなと思っているんだ。補助金だといろんな規制もあるし、報告が大変だからね。農業の収入だけで労賃として身内に1000万円あればと考えているけど、それ以上は残している。自己資金で対応できるのは幸せだね」
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武内才一 タケウチサイイチ
代表取締役
(株)アクティブ・ファーム
1951年、秋田県羽後町生まれ。秋田県立農業大学園畜産学科卒業。 十文字町農業協同組合(現・JA秋田ふるさと)での勤務を経て、94年に就農。
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