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新・農業経営者ルポ

大潟村に入植できなかった悔しさをバネに


基本線としている自力で50 ha規模の経営を実現する布石はかくのごとく打たれた。他方、農業収入の質的向上ということではある多収品種に期待を寄せていた。

しきゆたかで狙うは1t取り

作付けの内訳は、あきたこまちとしきゆたかが7haずつ、萌えみのりが4.5ha、掛米のぎんさんが9ha、枝豆が1.5haになる。飼料用米には一切手を出したことがない。販路は、農協5割、食品会社4割、直売1割とリスク分散をしている。生産3年目のしきゆたかは武内にとっての有望株だ。
この品種は、豊田通商(株)が出資する水稲種子開発ベンチャーの(株)水稲生産技術研究所が権利を有し、片親に分子マーカー育種法で改良したコシヒカリを用いている。一穂粒数が非常に多いうえに千粒重も大きいことから収量性に優れ、耐倒伏性も備える。武内が作付けする早生で半糯米のハイブリッドとうごう4号は、コシヒカリ由来の良食味はもちろん、もっちりした食感が特徴だ。
豊田通商が商流を構築し、生産者への種もみの供給から契約栽培、コメの販売と一手に引き受けている。炊飯後に老化しにくい品種特性を生かし、弁当やおにぎりなどの原料として中食や外食向けに営業活動を進めているところだ。同社によると、今年度の作付面積は600ha台半ばだという。
「3年作ってみて俺のところでも適応する見通しが立ったので、将来的には全面積の半分くらいでやりたいと思っている。あきたこまちで10俵取っているけど、しきゆたかは13俵以上まで行く。もう1俵上がれば種もみ代を回収できるね。あきたこまちの価格がそれほど伸びないから、反収が上がるメリットはあるし、そこがおもしろい」
一般にしきゆたかのようなF1品種の種子は高価だといわれる。同品種も例外ではないが、武内はそれを補って余りある1t取り/10 aを見据えていた。
「まだ3年だから栽培特性を熟知しているとはいえないけど、あと数年作れば茎が倒れる極限のところまで管理できるんじゃないかな。一穂粒数が180で、うち整粒を85%以上に引き上げていければ、理論上は1t取れるはずなんだよね」
その秘策として武内は疎植を検討している。あきたこまちでは37株/坪で実績を挙げており、慣行の70株/坪と比べても収量にはあまり差がないという。苗箱数が半減することで育苗代は下がり、田植え時の人手も少なくて済む。難関かもしれないが、このしきゆたかの1t取りに向けた戦いは66歳の武内の胸を熱くしている。

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