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スマート・テロワール通信

グローバル化による東京一極集中は「愚者の楽園」

大手製造業の不祥事が続く原因はコスト競争

昨今、神戸製鋼所や日産自動車、スバルなど大手製造業による品質上の不祥事が相続いている。この問題の根は深い。
1960年代から米国の品質を目指してきた日本の製造業は、80~90年代には世界に誇る品質に達した。しかし、2000年代に入ると、企業間の競争の焦点は、いかに魅力的な価格を提示するかというコモディティ化の時代に移っていった。さらに経済のグローバル化に伴い、韓国や台湾を先達にBRICsと呼ばれる新興国企業が安い人件費を武器に鉄鋼、電機、自動車業界に進出すると、コモディティ化は一気に加速し価格競争に輪をかけた。
こうして日本の生産現場の目標は、品質からコスト削減に置き換わった。企業経営者は、「ストレッチ」や「チャレンジ」などのスローガンで現場にプレッシャーをかけ、現場は無理を重ね、挙げ句、「ルール違反」を犯すところまで追い込まれていった。つまりコスト競争が、今回のような不祥事を招いたのである。

製造業の力を弱めたのは、
グローバル化と貿易と金融の自由化

日本の製造業がコスト競争に陥った背景には、経済のグローバル化がある。「貿易と金融の自由化」が絶対的な正義であるかのような幻想を抱かせながら、世界市場のさまざまな垣根が取り去られた。金融の自由化は、過剰マネーが世界中の投資機会を超高速で探索し、短期的な利ざや稼ぎにしのぎを削る世界を生み出した。企業経営者は「お客様満足」の旗に変わって「株主様満足」の旗を掲げるようになり、「ROE(当期純利益/株主資本)10%達成」などという空疎な目標の実現に突き進んだ。
また、貿易の自由化は世界的な規模での厳しいコスト競争を製造業に課すことになり、非正規労働力への依存による人件費の圧縮が始まった。コスト競争に耐えられない企業は、低賃金労働を求めて工場を海外に移転し、先進国での製造業の空洞化が進展した。

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