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「有機栽培を活かしたら商品が多様になりました。顧客側が求めていることも多様です。顧客の希望に応えながら、有機の可能性を広げていくために、いろいろ試していきたいと思っています」
【茶農家だからこそ茶の世界を伝えられる】
生産や研究に忙しそうな鈴木氏だが、NPO法人日本茶インストラクター協会の日本茶アドバイザーの認定を受け、茶の普及活動に参加している。資格を取得するために講習会に集まる人々は、製茶問屋、業界の指導的な立場、一般消費者などさまざまだ。そこでの情報交換が、市場や業界の動向を把握するのに役立っている。また、鈴木氏自身は、集まった人々に茶栽培のプロとして、茶の世界を伝えている。
「お茶というのは、急須でどういれるかによって味が変わるので、飲む人が最後の仕上げをすることになります。茶農家は、挿し木から育てて、製茶して、包装前の仕上げをして、それを販売しています。それぞれのところに技や知識の蓄積がありますが、全体を見渡すことができるのは、茶農家の特権だと思います。さらに、お茶のいれ方まで踏み込んで伝えられる立場でもあると思います」
海外の人々にも、日本茶の文化とセットで伝えたいと考えている。きちんと文化や日本茶がどういうものか、正しいいれ方はどういうものか。それを伝えることで、国内で評価されている茶が、海外でも評価されると考えているからだ。
そのために、自ら輸出を試みたが、事務手続きや集金に手間がかかったり、量をそろえないと割高になったりするという問題に直面した。そこで、輸出をしようという製茶問屋に託し、相談しながら外国人向けの茶をつくるようになった。
「現在は、抹茶やほうじ茶が人気ですが、煎茶にも目を向けてほしいと思います。輸出すること自体が目的ではありません。海外で日本茶が正しく評価され、それが日本人に伝わって、お茶が見直されるようになれば良いと思っています」 (平井ゆか)
鈴木 猛史 1969年、静岡県春野町生まれ。筑波大学卒業後、茶農家の5代目として就農し、無農薬栽培を始める。2001年にはマルセン砂川共同製茶組合員全員が有機栽培に全量転換した。現在、八蔵園の経営規模2ha、共同18ha。
過去の記事はこちらより
「父と地域と自分とで育てたブランド茶」
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