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農業は先進国型産業になった!

日本一の黒衣をめざす産地集荷業者/㈲油屋(茨城県古河市)

茨城県は都府県ではNo.1の農業産出額を誇る。かつては千葉県とトップを競っていたが、2008年以降、逆転した。農業の発展地域である茨城県を見て興味を引くのは、産地市場(地方卸売市場)や仲買人が多いということである。特に野菜産地で多い。農協の独占的地位はない。産地集荷業者の(有)油屋もその一つで、個人経営であるが、契約栽培農家の延べ経営面積は850haに及ぶ。農業発展地域を支える流通業者はいかなる機能を果たしているか。
産地集荷業者である(有)油屋を事例にして、サポーティング産業としての流通業がいかなる機能を果たしているのかを明らかにしたい。

(1)850haの経営手腕

茨城県は農業の発展地域であるが、中でも県西地域は関東平野のど真ん中であり、首都圏の食料基地として野菜産地が発展している。その一角、古河市にある(有)油屋(鈴木秀明社長)は、「産地集荷業者」として役割を果たしている。もともとは肥料商であるが(大正時代創業、現在4代目)、当時から米麦の集荷も営んでいた。
生産意欲のある農業経営者を選んで契約栽培し、その生産物を商社や加工メーカーに販売している。現在の集荷対象はコメ(主食用、エサ米)、ソバ、ジャガイモ、野菜(レタス、キャベツ)である。
表1は油屋の事業概要である。パートナーである契約栽培者は延べ160人、集荷作物の栽培面積は850haと大きい。規模の大きい農業経営者と契約栽培している(単純平均5.3ha。コメと北海道を除くと10 ha)。販売額は6億円、このほか肥料・農薬の販売事業もあり、売上高は合計8億円である。
主な販売先は実に多彩、主食用米は全集連系卸他、エサ米は飼料メーカー、ソバは商社経由製粉メーカー、ジャガイモはカルビーポテト社、野菜はカットメーカーなどであ
る。
農業経営で一番重要なものは「売る能力」である。作るのは相対的に簡単であり(だからすぐ過剰供給になる)、次いで経営、一番難しいのは売ることである。1980年代に米国で農業調査を繰り返したが、米国のエクステンション・サービス(農業改良普及事業)では、技術、経営、市場の順に難しいとされていた。日本では、かつては農地(借地)の供給が少なく規模拡大が難しかったが、今は農家の高齢化に伴い借地の供給が増え、規模拡大は容易だ。農業経営者の才覚を問われるのは売る能力である。
農業経営発展の制約条件は販売力の有無である。売る能力があれば、いくらでも規模拡大できる。契約栽培農家の経営発展も油屋の販売力に依存している。逆にいうと、油屋の鈴木社長は850ha規模の農業を経営する手腕を持っているといえよう。
もちろん生産者が意欲のない農家であれば、販売能力があっても集荷事業は成り立たない。契約栽培のパートナーに、意欲のある農業経営者に恵まれた。「俺たちが作るから売ってこい」が契約栽培のスタートのようだ。

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