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またジャガイモは選別機の導入を検討中で、この選別機を使えば収穫作業がスピードアップし、4人でしていた仕事が1人でできるので、規模拡大が可能になる。「6本目の矢」は自社生産の可能性も含んでいる。
「機械化できるものを作る」。農村の労働力不足という制約条件があるので、それを見越したうえで機械化に適した作物を探すのが鈴木氏の開発戦略である。タマネギはそうした条件を持つ作物とみられている。
油屋は「モデル農場」をめざしている。実験が成功した作物が契約栽培農家に普及していけば、油屋のビジネスチャンスが増える。
鈴木氏はいつも自分たちの存在価値は何かを考えている。というより、裏方で、存在価値を発揮できるものを創り出そうとしている。「うちが何かをやって成り立つ」取引を創出するのである。受動的に中間流通の役割を果たしているわけではない。
(3)日本一の黒衣めざす
「蕎麦だったら油屋さん」と言われているようだ。油屋が扱うソバは定評がある。油屋の商品は品質管理がしっかりしている。
茨城産の常陸秋ソバは国内トップブランドであり、価格は高い方である。キタワセ(北海道産)+2000円/俵。チェーン店では使えない。常陸秋ソバの産地規模は小さいので(単収は高い)、天候により量も価格も不安定である(表2参照)。チェーン店で使われるソバは中国産、北米産が多く、国産ものは産地規模の大きい北海道産を使う。ちなみに油屋は4年前、北海道中標津に進出した。
油屋の仕事は「集荷+保管」であるが、受動的に中間流通の役割を果たしているわけではない。
鈴木氏の経営理念は「日本一の黒衣になる」ことである。具体的には、品質のサポートと価格交渉の役割である。生産者とユーザーの中間に立って、どちらかが不利にならないように、Win-Winの取引が成立するよう行動する。ユーザーは品質のいいものを仕入れ、生産者は高めの価格で販売できるようにする。そうなれば、需要と供給が安定的に増えることになるだろう。
油屋は厳しい品質管理をした商品を顧客に届けているが、それによって生産者は安定した需要先を確保でき、生産を増やせる。需要と供給が増え、油屋の取扱量を維持、増大できる。油屋は取引の裏方に徹する。競争市場で生き残るには何が必要か、模索した結論が「黒衣」役である。
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叶芳和 カノウヨシカズ
評論家
1943年、鹿児島県奄美大島生まれ。一橋大学大学院経済学研究科 博士課程修了。元・財団法人国民経済研究協会理事長。拓殖大学 国際開発学部教授、帝京平成大学現代ライフ学部教授を経て2012年から現職。主な著書は『農業・先進国型産業論』(日本経済新聞社1982年)、『赤い資本主義・中国』(東洋経済新報社1993年)、『走るアジア送れる日本』(日本評論社2003年)など。
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