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土と施肥の基礎知識

「土づくり」から「健康な土づくり」へ

1. リン酸過剰ハウスでのリン酸肥料無施用試験

全国土の会の支部組織である遠州土の会の角田茂巳会長は静岡県磐田市で長年にわたりチンゲンサイの年間6作程度の周年栽培を行なっている。
1996年に「全国土の会」に入会するまでは、年間5~6t/10aの豚ぷん堆肥と有機質肥料による栽培を続けてきた。角田ハウスの土は台地上の赤黄色土だが、長年の堆肥施用で作土はあたかも黒ボク土のような黒色で、可給態リン酸が大量に蓄積していた。
そこで、2001年より可給態リン酸540mg/100g(以下交換性カリも含め「/100g」を略)のチンゲンサイハウス(写真1)でリン酸肥料無施用試験を開始することになった。面積160平方mのハウスを4分して、慣行区と試験区を2連で設け、慣行区には魚かすを主原料とする有機配合肥料(8-1-8)、試験区には本誌10月号で紹介した搾油生ごみ肥料 「みどりくん」(4-1-1)を施用した。全国土の会活動に参加して施肥改善の必要性を認識していた角田さんは、慣行区の有機配合肥料をそれまで施用していた7-7-5からリン酸の少ない8-1-8に替えた。そのため、チンゲンサイ1作当たりの肥料成分施用量は窒素9.6、リン酸1.2、カリ9.6kg/10aであった。一方、試験区には「みどりくん」240kg/10a(窒素9.6、リン酸2.4、カリ2.4kg/10a)を標準として、一作ごとの土壌診断分析結果により調整し、不足するカリは塩化カリで補給した。11年9月の台風でハウスが全壊し一時中断したが、これまで16年間の継続栽培が続いている。当初、この試験目的はリン酸施肥削減であったが、角田さんの意向により慣行区でも低リン酸肥料を使うことになったので、両区のリン酸施用量はわずかではあるが試験区の方が多くなった。ただし、試験区のリン酸はすべて原料である生ごみに由来する。
16年間に及ぶ試験区の可給態リン酸の経時変化を図1に示す。試験開始当初540mgであった可給態リン酸は経時的に減少し、現在ではおよそ300mgにまで低下した。詳細なデータは省略するが、可給態リン酸の減少量とチンゲンサイのリン酸吸収量はほぼ一致している。すなわち、土壌中に残留していたリン酸がチンゲンサイに吸収利用されたわけである。至極当たり前の結果だが、16年間にわたりリン酸肥料を全く施用せず栽培を続けたことに大きな意義がある。チンゲンサイ栽培後には必ず土壌診断分析を行ない、試験区ではその結果に基づいて「みどりくん」と塩化カリを施用してきたが、数年前より硫酸イオンの分析を行なうようになったところ新たな事実が明らかになった。

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